1997 Fiscal Year Annual Research Report
「甘えの心理」への認知・人格・社会心理学的視点からの総合的アプローチ
Project/Area Number |
09610129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 和生 九州大学, 教育学部, 助教授 (00281759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸野 俊一 九州大学, 教育学部, 教授 (30101009)
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Keywords | 甘えの心理 / 愛着 / 健常成人 / 人格 / 社会・認知心理学的視座 / 甘えの素朴概念 / 認知プロセス / 内的作業モデル / 尺度構成 |
Research Abstract |
9年度は,つぎの2つの観点からこのテーマに関して研究を行った. 1.尺度構成:Kato(1995)は「甘えに対する態度・価値観」が甘え行動・交流を根底で支えていると仮定した.これを具体化するものとして,理論的に「甘えに対する態度」,「甘えの内的作業モデル」及び「一般的対人に関する内的作業モデル(人間観,関係観)」を想定し,測定するための尺度構成を試み.作成した尺度を大学生に実施し,その結果その尺度には充分な信頼性があることが確かめられた.また,妥当性の検討として,甘え交流プロセスで想定される「甘え可能性予期」,「甘えへの抵抗感」,「行動へ移すか否か」の評定,及び幼児期・思春期・現在の母子関係の質の評定との間の相関分析を行ったところ,有意な連関が見いだされた. 2.土居の仮説の検証の試み:土居(1958)は,症例研究から神経質傾向の本態は「甘えたいのに甘えられない」という心性であると主張している.本研究ではこの仮説の妥当性の検証を大学生を用いて試みた.神経質傾向の測度としてMPIを用いた.また「甘えたいのに甘えられない」心性として甘えに対する抵抗感として操作的に定義し,両測度間の関係を調べた.その結果,神経症傾向高群と低群の間では甘えに対する抵抗感評定に差が認められなかった.更に,土居は内在化された自己表象・他者表象の質とは神経質傾向は無関係と主張しているが,重回帰分析の結果,今回作成した自己観・他者観尺度とは有意な負の関係が,さらに甘え内的作業モデルとは予想に反して正の相関が認められた.このことは,土居の仮説の妥当性に疑問を投げかけるもとの言える.
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