1997 Fiscal Year Annual Research Report
心身不調をめぐる〈物語narrative〉の心理学的分析
Project/Area Number |
09610135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
堀毛 裕子 東北学院大学, 教養学部, 教授 (90209297)
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Keywords | 健康心理学 / 病気 / 物語 / 意味づけ / illness / narrative |
Research Abstract |
健康心理学的アプローチにおいて重視すべきは、病気の生物学的・医学的意味(disease)ではなく、様々な社会的・心理的意味(illness)の側面である。その点から見れば、人々が心身の不調に際して多様な求援助行動は、illnessの側面についての対応を求めて、不調を自分に納得のいく形で意味づけ、自分が受け入れることのできる不調についての物語(narrative)を作り上げる過程といえよう。 本研究は、このような人々の不調に関するnarrativeについての検討を主目的とし、2年計画の研究の初年度は、人々の病気に対するnarrativeをある程度多量に収集して、全体の様相を把握することに重点を置いた。日本ではまだ数例の報告しかみられていない「健康日記法」を用いて、自然な状態での人々の心身不調のエピソードやそれへの対処法を把握するという方法を試みた。 調査は、主に中年期男女を対象者とした。任意の一週間について毎日体の具合や気分を尋ね、不調を示した場合には、対象者本人が想定する原因、不調への対処行動、専門家や家族などによる不調原因の説明などについて記入させ、その日の同居家族の不調の有無とその原因帰属についても尋ねた。同時に健康や病気に関する帰属傾向を問うHealth Locus of Control尺度への回答も求めた。データの回収は既に完了しており、200名以上を対象とした調査で64名(男子14名、女子50名)の記録が得られた。全体的傾向としては、不調を感じた場合、人々はそれについて自分なりのnarrativeを持ち、多くは家庭内での処理による対処行動をとる。また専門職よりも家族への相談が多いが、相手のnarrativeをすぐには受けいれないようすがみてとれる。現在、7日分の記録の量的及び質的分析に関する最適な方法を求めて、いくつかの技法を併用した検討を進めている。
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