1998 Fiscal Year Annual Research Report
児童期における家族との分離経験が成人後の社会的行動に及ぼす影響について -太平洋戦下の学童集団疎開経験の成人後の社会行動への影響-
Project/Area Number |
09610137
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
永田 良昭 学習院大学, 文学部, 教授 (80080373)
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Keywords | 児童期 / 集団的同一性 / いじめ / 人間関係 |
Research Abstract |
平成10年度は、以下の諸項に関する資料の収集と分析、今後の準備を行なった。1)前年度に続けて、戦時下に児童期をすごした世代で都市部から農山村部に疎開した経験をもつ者の日記、絵画等の作品、地方史誌など文書の収集および、当時の関係者である受け入れ側の責任者で健在である人々、当時の児童からの聞き取り調査。 2)対照資料として、他の時期に児童期を過ごした人々の自伝的資料の収集と内容分析。 3)学校単位のアンケート調査実施のための対象校選定資料の収集とアンケート調査実施の諸準備(名簿の収集、郵送のための印刷等諸準備)とアンケート内容案の検討。 これまでに得られた結果としては、1)学童集団疎開児童の間での「いじめ」現象は、今日のそれと現象的にはほとんど変わらないこと、2)その背景に、児童が日常生活にいて、発達段階に対応した集合的同一性が確認できる条件が存在したか否かということがあると思われること、3) 「いじめ」は、いじめた側にとっても大きな精神的外傷となる可能性があること、4)以上のことから、児童期の人間関係のあり方、それに関係するその時期の集合的社会組織(家族、地域共同体など)との一体感の形成が、成人後の人間関係の形成に大きな影響をもつ可能性があること、5)従来比較的検討されることの少なかった児竜期の同一性の確立に係わる要因、確立の影響の研究が重要であること、6)学童集団疎開は、都市文化と農山村文化との交流の契機となった可能性があるにも係わらず、疎開児童と地元児童との交流はほとんど生じていないこと、である。
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