1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
河西 宏祐 千葉大学, 文学部, 教授 (20015837)
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Keywords | 労働時間短縮 / 勤労意欲 / 労使関係 |
Research Abstract |
1、本研究は、労働時間短縮が労使関係にどのような変化を与え、それにともなって労働者の勤労意欲(エ-トス)がどのように変化しているかを実証的に研究することを目的としている。 2、本年度は交通産業(広島電鉄)を調査対象とし、予備的調査をおこなった。 3、以上の調査を通して、次の諸点が明らかになった。 (1)同社を含め、現在、交通産業全体の労使関係にとっての最大の問題は、変形労働時間制にある。 (2)変形労働時間制は日経連の指導の下、経営者側がイニシアティブをとって導入し、運営されている。これは労働分野の規制緩和(労働基準法の改定)の先導的試作として行われている。この結果、従来の残業手当分が浮いてきており、経営側にとっての経済効果は大きなものがある。 (3)現在のところ、労働組合側は変形労働時間制に充分には対応できず、後手に廻っている。 (4)職場の従業員にとっては、変形労働時間制の結果、残業の大幅な減少、不規則な勤務形態、1日当たりの労働時間の延長、といった影響がでており、強い不満がある。 (5)従業員の不満は経営者側のみならず、これを受け入れた組合側に対しても向けられている。この結果、職場の労使関係は緊張を孕んできている。経営者側への不信感のみならず、むしろ組合役員に対する不信感が目立っており、来年度の組合役員選挙に向けて、激しい構想が展開されつつある。 (6)変形労働時間制による経済効果は大きかったが、労使関係の緊張と混乱、従業員の勤労意欲の低下というマイナス面も大きい。今後、この点がどのように推移していくか、次年度以降も引続きこの事例を調査対象として取り上げ、追跡調査を継続したい。
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