Research Abstract |
地域社会の内発的な発展は,受け継がれてきた地域文化の持続と発展を中核とし目標とするものであり,それが可能となる経済的政治的環境を整えることが第一の課題となる。この国の地域政策の展開やその影響を受けつつ形成されてきた地域構造は,国全体の工業化・近代化が優先されてきた経過を示している。内発的な発展の大切な基礎の一つは経済的な発展,豊かさであり,それは,地域の諸産業が如何に編成されるかにかかっている。自給的循環ではなく,一定程度広がる社会分業の中で,各地域が位置づく発展を考えるとすれば,地域産業はその地域の対外的な機能と重みを決める。つまり発展の基礎となる。この国の多くの地域において,ものの生産ととともに,都市型生活者のもつ自然志向性の充足が,今後の重要な機能となるはずであり,それは,広義,観光機能といえる。自然志向性は,私たちの日常生活において重要な行動選択基準になると思われ、多くの地域、農山漁村地域にとって,看過し得ない産業の基礎を提供する。地域産業としての観光産業が基礎づけられる。 対象地である米沢と高畠を含む山形県置賜地域は,周辺の大中都市との距離の点からも,上記のような観光産業展開には有望な地域である。高畠における,都市農村交流の持続的拡大,有機農業の地域的展開は,農村滞在型の観光を予想させるものであるし,米沢の伝統的な歴史遺産,産業遺産,伝統産業体験を核とした観光の展開は,保養リゾート地としての温泉もあわせ,置賜全体としての観光資源の潜在的豊かさを示す。近年のそれぞれのまちづくりは観光産業の可能性を前提にしている。観光産業は,農業を含む既存のものづくり産業の発展とその成果を直接の資源にするのであり,その意味では付加価値型の産業である。対象地にとっても,今後の長い経過の中で,農業や工業を発展させ持続させることは,重要な課題であり続ける。
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