1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
安田 尚 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (30157995)
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Keywords | 新潟県燕市 / 地場産業 / 輸出産業 |
Research Abstract |
新潟県燕市は、幾多の困難を乗り越え今や金属複合製造・加工都市に変貌を遂げている。当産地は(1)洋食器、器物、研磨業を中心とする地場産業都市、(2)中小零細企業を主体とする重層的な社会的分業体系、(3)これらの製品の輸出産業と言う三つの特質を持った都市である。しかしここ十年来の内外の経済状況は当産地に多くの困難をもたらしている。つまり度重なる「円高」、中国やNIES諸国の追い上げ、「バブル経済」崩壊後の長期不況に見舞われ、その輸出比率を低めながら内需依存へシフトしている。しかし「内需変換」も所謂「物余り現象」や「市場の成熟化」によって困難を強いられている。こうした状況の下で洋食器はその産業的比重を低め、これに対して器物業はその比重を高めており1980代後半以降事業所数、従業者数、出荷額において伴に首位に立つに至った。その原因は、洋食器が外需中心であるのに対し、器物業は内需中心であること共に多品種生産による付加価値の増大に努めたことにあると思われる。しかし両部門とも今や(1)「内需」への一層の転換や(2)国際分業体系における新たな「棲み分け」を迫られるなど「構造転換」に直面している。当産地のこうした「構造転換」において重要な役割を果たすのが「流通部門」である。当地の「流通」企業は隣接する三條市のそれに比して資金量、市場支配力の点で劣っている。これは明治以来の経済史的な経緯の所産である。弱小とは言え、燕市の流通部門は従来(1)製品ニーズの情報、(2)製品開発の情報、(3)経営情報等の収集機能を持っていたとされる。しかし今や燕産地における流通部門は、国内量販店の市場支配力の増大、海外バイヤーの圧力など幾多の困難に直面しているが、製品の内外需要の調整など産地全体の「構造転換」を主導する「管制高地」の役割を担うに至っている。
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