1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における文化接触と階層文化形成の動態に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
09610177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 清忠 京都大学, 文学研究科, 教授 (50121398)
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Keywords | ナショナリズム / アジア主義 / 文化接触 |
Research Abstract |
近代日本のナショナリズムを、アジア主義を軸にして研究した。 アジア主義を問題とする場合、とくに重要でありながら研究がたち遅れているのは「思想」の問題と「社会意識」の問題なので、この二つに焦点を絞った。 一、思想 明治期については岡倉天心を中心にして研究が進んでいるが、大正・昭和期に関しては体系的研究がないので、大川周明・北一輝・石原莞爾の三人を軸にして研究を進めた。大川・北はともにその文明史観において天心の影響を強く受けていることが明らかにされたと同時に、前者においては満蒙問題が理想主義的アジア主義から離れていく契機になっていることが、後者においては過度の日本中心主義が他のアジア諸民族への平等主義的配慮の不足を招いていることが、それぞれ明らかにされた。それに対して石原の東亜連盟の方が平等主義が強いのだが、満州事変を生起したこと自体が石原の「十字架」であった。三者の検討からいえることは、国内的・国際的に「無産者」たる陣営の人々の平等主義志向が、支配的体制であった「親米英的秩序」への敵意となり、それが日本がワシントン体制から離脱することにつながっていったということである。 二、社会意識 映画を中心にして大正・昭和期のアジア主義的社会意識を検討した。満州事変の頃からアジア主義的映画が作られ出すが、日中戦争期までは、ほとんど「満蒙」を扱ったものであり、そこでは日中の「連帯」が協調されていた。太平洋戦争がはじまると突然東南アジアやインドまでを対象として含めたものが作られだすが、それらはいかにも安直なものが多く、それは「大東亜共栄圏」というスローガンの「急造」ぶりに対応していたように思われる。 以上、思想と社会意識の両面からいえることは、日本人のアジア主義的意識の問題は正負含めて日中間に核心的部分が存在していたということである。
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Research Products
(1 results)