1998 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における文化接触と階層文化形成の動態に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
09610177
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
筒井 清忠 京都大学, 文学研究科, 教授 (50121398)
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Keywords | 文化接触 / 階層文化 / ナショナリズム |
Research Abstract |
本研究では、明治期から昭和戦前期にかけての日本の近代化過程における異文化との接触の様態を、特にエリート文化と大衆文化という2つのレヴェルの差異と相互作用に着目しつつ、社会学的見地から分析することによって、次の2点の解明を試みた。(1)外来文化がいかにして階層間の区別・差異化の指標として(また逆に、文化的平準化の媒体として)、両者の相互作用状況のなかで機能しえたか。(2)大正期以降の大衆社会の出現の過程で生じた文化的平準化の中で、外来文化がエリート文化・大衆文化の相互浸透の媒体としていかに作用したか。 こうした研究の過程から、特に次の点が明らかになった。(1)明治期以降の日本のエリート文化が欧米からの外来文化を核として形成され、親米英的な性格が強かったのに対し、大衆文化は日本の土着文化と連続する面が大きく、ナショナリズムに傾きがちであった。(2)大正期以降の文化的平準化の中で、外来文化を核とするエリートは孤立していき、ナショナリズムを強めた大衆から攻撃されるようになっていった。 以上の知見をもとにして、大正デモクラシーから昭和軍国主義にいたる近代日本文化の変質過程について自説をまとめ、本年度末に出版される共著において発表した。最終的に、外来文化の選択的受容の結果が近代日本におけるエリート文化と大衆文化の分化に影響を及ぼしただけでなく、大正デモクラシーから昭和軍国主義にいたる日本の進路にも大きなインパクトを与えたことが明らかになった。 なお科学研究費補助金の使用にあたっては、図書費に40万円程度をあてたほか、資料収集のための交通費に25万円程度、資料整理・調査・データベース作成の研究補助(謝金)に45万円程度をあてた。
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[Publications] 筒井清忠: "京都帝国大学の拡充" 京都大学百年史 総説編 第1編第4章. 335-372 (1998)
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[Publications] 筒井清忠・田中紀行: "京都帝国大学の苦悩" 京都大学百年史 総説編 第1編第5章. 420-466 (1998)
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[Publications] 京都映画祭実行委員会編筒井清忠・加藤幹郎責任編集: "時代劇映画とはなにか-ニュー・フィルム・スタディーズ-" 人文書院, 270 (1997)
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[Publications] 青木保・川本三郎・御厨貴・筒井清忠・山折哲男: "近代日本文化編 第1巻 近代日本への視角" 岩波書店, 208 (1999)