1997 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的な地域文化の特性と機能 -小豆島肥土山歌舞伎をめぐって-
Project/Area Number |
09610178
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 道邦 神戸大学, 文学部, 教授 (20067862)
|
Keywords | 地域文化 / 農村歌舞伎 / 表出文化 / 共同態 |
Research Abstract |
本研究の目的は、地域に伝承され現在も活動中の伝統芸能(地方歌舞伎)を表出文化としての歌舞伎ドラマの地域的「変形」として捉え、その社会的な特性および機能を明らかにしようとする。具体的には、香川県小豆郡土庄町肥土山地区(平成9年7月1日現在、289世帯、900人)にほぼ300年にわたって伝承されてきたといわれる「肥土山歌舞伎(ひとやまかぶき)」を対象とし、地方農村歌舞伎の生成・持続・変容の過程および社会的・文化的機能について調査研究する。本年度の研究実績の概要は次のとおりである。 (1)地方農村歌舞伎一般の共通性のみならず肥土山歌舞伎の独自性も明らかにするためには、他地域の地方歌舞伎との比較検討が不可欠であるという点について、以下の観劇および出演者からの面接聴取をとおして確認した。それは、平成9年10月26日、肥土山の舞台(国指定重要有形民俗文化財)において第12回国民文化祭かがわ'97の一環として挙行された「全国農村歌舞伎フェスティバル」であり、地元の小豆島歌舞伎(肥土山歌舞伎を含む)、山形県の黒森歌舞伎、岐阜県の鳳凰座歌舞伎、岡山県の横仙歌舞伎、大分県の国見町田舎歌舞伎、の五座が参加した。 (2)肥土山歌舞伎が地区を構成する6組の住民組織の「輪番制」に従い毎年挙行されてきたという事実から、地域文化を特徴づける「共同態」的な平等性と共同性を確認した。 (3)「肥土山農村歌舞伎保存会」の会長、「肥土山農村歌舞伎後継者育成会」の会長、平成10年5月公演当番予定の「組」の大世話人からの面接聴取によって、肥土山歌舞伎の担い手の高齢化に伴う公演実施の困難さ、および後継者養成に際しての多大なエネルギーの必要性など、地方歌舞伎の伝承における問題点を確認した。
|