1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610186
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
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Keywords | 参照システム / 医療行動 / 情報回路 / 情報収集 |
Research Abstract |
専門家参照システムと素人参照システムの接点と相互連関の構造を明らかにすることが、第3年目の課題であったが、専門家参照システムについては時間の制約上本調査の実施に至らなかった。今後の課題である。素人参照システムについて平成12年度は受療にかかわる個別調査の先例を参照しながら、さまざまなタイプの傷病にかかった人々に対する面接聞き取り調査を企画し、7事例を収集した。これに障害児家族の事例を加えて分析した。聞き取り調査項目のなかでの主眼点は人々がいかなる素人参照システムを構成しているかという点にある。収集した少数事例の分析からは一般化することは困難であるが、今回の事例研究を通して今後の数量的調査研究において仮説の中に組み込むべき変数の重みづけを明らかにすることができた。明らかになった変数は次のとおりである。 居住地の環境 居住年数 本人や配偶者の職業 教育年数 傷病の種類 家族構成親族ネットワーク 友人・知人のネットワーク 新聞・雑誌・テレビなど従来型のマスメディアの利用機会 ニューメディア(インターネット)の利用機会 相互に関連しあって医療行動に影響を与えると考えられるこれら変数を聴き取り調査の中に探ってみると、本人や配偶者の職業ならびに教育年数など世帯の階層上の位置を決める変数が医療の専門家たち(あるいはその家族)との間の情報回路への接近可能性を高めるのではないという仮説を示唆した。また地域社会における親族ネットワークや近隣ネットワーク、また友人や知人のネットワークなどパーソナルなネットワークは、特定の傷病に対する素人の対処に限って言えば、映像や活字のメディアを通した情報収集の回路よりも、意思決定において依然重要な位置を占めているという仮説を支持するように思われた。今後の大規模な数量的調査研究の基礎になると考えられる。
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