1997 Fiscal Year Annual Research Report
若者の個人主義化(私化)とそれがもたらす制度的諸葛藤に関する比較調査研究
Project/Area Number |
09610194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
須藤 廣 北九州大学, 文学部, 助教授 (30275440)
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Keywords | 若者 / 個人主義 / 私化 / 学校 / 統制 / 戦略 |
Research Abstract |
本年度は、東京都立高校での聞き取り調査を中心に本研究を行った。東京都区内の高校4校を訪問し、校長、教頭、教員に対する聞き取り調査(15名)に、生徒指導の実態を中心に聞き取り調査を行った。同時に、それらの高校において、生徒合計40名に対して、グループ討議を中心に聞き取り調査を行い、その場面をビデオで記録し、高校生の行動の基準についての分析を行った。教員に対する調査と、生徒に対する調査を総合し、都区内の高校生の学校における生活の実態や、個人主義的価値の浸透、そしてまた、生徒指導を中心とする学校生活の統制のあり方に対する、教員、生徒それぞれの意味付与と戦略の特徴を分析した。諸調査の結果、教員側の実態としては、生徒へ統制のあり方が、一面では、暗示的なものからより明示的なものへ、すなわち、より官僚主義的なものへと変化し、しかしまた、一面では、生徒の全生活を覆うものから、かなり限定的なものへと変化しつつあることが分かった。また、生徒側の実態としては、限定的な統制は受け入れ、学校秩序は平穏であるが、生活全体の中で拡張する指摘領域においては、アノミックな状況が進展していることが分かった。特に、移動通信機器の普及によって、高校生の、学校内外での友人間のコミュニケーションのあり方が急速に変化したり(多くの都立高校では、移動通信機器の学校への持ち込みは禁止されていない)、電話料金の支払いのためのアルバイト等が増えたり、高校生の生活全てにおいて私化が深化しつつあることが分かった。聞き取り調査から得られた以上の知見をもとに、平成10年度は、質問紙により代表性を持った客観的な調査を、都立高校4校、福岡県立高校4校、および東京都、福岡県内の専門学校、大学(それぞれ2校程度)に対して行い、現代における若者の個人主義の特徴についてより綿密な分析を目指す。
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