エジプト・シリアの経済発展と伝統経済

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09610213
• Research Institution: Komazawa Women's University
• Principal Investigator: 黒田 美代子 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (80277897)
• Keywords: エジプト経済 / シリア経済 / 伝統経済 / イスラーム商法 / 地域開発 / 開放政策 / 職人組合

Research Abstract

3年間にわたる本研究は、エジプト、シリアの経済発展の実状と、伝統経済が占める地位、役割の分析を主眼としている。タイトルに掲げられた<経済発展>、<伝統経済>は、両者の関係を論ずる以前にそれぞれの固有な問題の検討を要するが、具体的には(1)該当地域の伝統経済の特殊性の解明、(2)その現状の確認、(3)フォーマル・セクターとの関係、(4)それが経済発展に占める位置と意義の確認、というプロセスを経て行われた。今年度は最終年度として、研究成果を深め、広げる意味で以下のような論文を執筆した。
職能組合の分析として、『中世職能組合の比較研究序論-ヨーロッパとイスラーム世界の場合』という基本的な分析を発展させて、『イスラーム経済の自己組織性-社会的諸集団(タワーイフ)と国家-』を発表した。これは権力が上下に貫通していたとする、在来の誤った見解にたいする有力な反論である。ここではギルドの自律性対ヒルファの市場性の対比が明らかにされたが、後者と国家の関係を特異な社会関係論で捉える分析法は、イスラーム世界の構造性を明確にする点で長い射程をもつものである。
また経済発展については、エジプトに関連して『経済の自由化と伝統経済の位置-中東和平の試みと経済発展のかたち-』を承けて、『地域開発の現状と問題点-エジプト経済開放政策のその後-』を、シリアについては『現代シリアの経済開発と政治・経済』、『現代シリアにおける開発経済の現状』を発表した。
また『イスラーム世界の女性とアンペイド・ワークー脱ペイメントの経済システム-』、『商いの構造-異文化の社会・経済のタクソノミー-』、『商いの構造-イスラーム経済と石田梅岩』を執筆し、W.アッ=ズハイリーの『イスラームの商法諸規定』のアラビア語からの素訳を完成した。

Research Products

• [Publications] 黒田 美代子: "現代シリアの経済開発と政治・経済"駒沢女子大学「研究紀要」. 29-42 (1999)
• [Publications] 黒田 美代子: "商いの構造-異文化の社会・経済タクソノミ--"駒沢女子大学日本文化研究所「日本文化研究」. 創刊記念号. 195-205 (1999)
• [Publications] 黒田 美代子: "商いの構造-イスラ-ム経済と石田梅厳-"駒沢女子大学日本文化研究所「日本文化研究」. 第2号. 164-180 (2000)
• [Publications] 黒田 美代子: "イスラ-ム社会の自己組織性-社会的諸集団(タワ-イフ)と国家-"地域文化学会「地域研究」. 第4号. 1-15 (2000)
• [Publications] 黒田 美代子: "イスラ-ム世界の職能組合と社会的自己組織性"基盤研究(A)「地中海商業都市成立の基盤と拝見に関する総合的研究:シリア、エジプトを中心として」. (4月予定). 1-15 (2000)
• [Publications] 黒田 美代子: "現代シリアにおける開発経済の現状"基盤研究(C)(2)研究成果報告書「中東経済の構造と政策:イラン、エジプト、シリアの比較研究を中心として」. (4月予定). 1-18 (2000)
• [Publications] 黒田 美代子: "「アンペイド・ワ-クとは何か」イスラ-ム社会の女性とアンペイド・ワ-ク"藤原書店 川崎賢子,中村陽一編. 323(192-207) (2000)