1998 Fiscal Year Annual Research Report
日米戦争と日系人:市民権放棄、「剥奪」、回復をめぐるアイデンティティの模索
Project/Area Number |
09610226
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Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
村川 庸子 敬愛大学, 国際学部, 助教授 (00174285)
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Keywords | 日系アメリカ人 / 日米戦争 / 「二つの祖国」 / ナショナル・アイデンティティ |
Research Abstract |
第二次大戦に関連して、意図的に、或いは意図せず(米国における市民権放棄、日本軍への従軍、占領期の選挙活動などを通して)米国市民権を失うことになった日系アメリカ人二世の生活史、戦後の体験と現時点での自己評価を通して、アイデンティティの揺らぎを跡づけ、彼らの人生の分岐点における選択を決定づけた要因の比較社会・比較文化的分析を試みた。本研究開始時に既に大半を取得していた米国資料館所蔵の市民権回復訴訟関係資料の整理・分析に加え、この2年間では、量的には僅かであるが、日本の資料館に所蔵されていた占領軍民政局関係資料の発掘及び当事者への面接を集中的に行い、米国における市民の「選別」の実状と、その渦中にあった人々の心理状況を考察した。 米国政府側の資料からは、この移民によって成り立つ「国家」が、歴史の一時点において、市民を「選別」する際に何を基準としたか、その法的根拠を何処に求めたのか、その流れの中で各関係機関がどのような判断を見せたかという、この国のいわば存立の基盤にも関わる問題が明示的に表れてくる。一方、「二つの祖国」間の戦争という極限状態の中で、文字通り二つの国家の間で依って立つ基盤を引き裂かれた人々の体験は--特に同一家族内での異なる選択とその現在における個々人の評価の比較を通して--、「個人」が「国家」と自己との関係性を如何に認識したか、即ち移民のナショナル・アイデンティティの有り様を具体的に見せてくれる。現代のようなグローバリゼーションの時代における「国家」とその構成員であることの意味を考える一助となる事例かと思われる。
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