1997 Fiscal Year Annual Research Report
教育・雇用システムにおける「資格」の機能に関する仏・英・独比較研究
Project/Area Number |
09610238
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
藤井 佐知子 宇都宮大学, 教育学部, 助教授 (50186722)
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Keywords | フランス / 教育 / 資格 / 教育システム / 経験学習 |
Research Abstract |
本研究は、フランス、イギリス、ドイツの三国における「資格」の社会的効用と教育システムの特質との関連構造を明らかにし、比較検討を行うことを目的としており、今年度は、まずイギリス・ドイツの資格制度の全体像とその社会的効用を明らかにすることを第一の課題とした。次に、フランスにおける資格制度をめぐる研究動向を文献資料から明らかにした。その結果以下の知見を得た。 (1)イギリスでは近年、国内のすべての資格を単一枠組みの中に位置づけるための「全国資格枠組み(NQF)」の確立が熱心に取り組まれており、これはフランスをモデルにしたものと考えられる。しかし、そこには産業界側の主導性の発揮、権力の分散化という点においてフランスの資格制度が抱える問題点を克服する視点が明確に盛り込まれている。 (2)ドイツは、産業労働力の中位水準職種の技能形成・入職・移動のルートをアカデッミックな基準とは異なる独自の基準と価値によって行う、いわゆるデュアルシステムが機能しており、これが教育システムのセレクショニズムを抑制する役割を果たしているが、最近の高学歴化現象は、その社会的価値を低下させる方向に作用しており、中等教育制度の再編との関連で今後さらにその価値は揺らいでいくものと考えられる。 (3)1990年代に入ってフランスではアメリカの経験学習に関する研究・実践が紹介されているが、それらが普及する土壌が形成されておらず、労働市場側の人事管理様式の転換を待たねばならないが、一部の業種において、既得資格ではなく経験を実績にカウントする試みが取り入れられていることは、新しい方向性を示唆する動きとして注目に値する。
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