1998 Fiscal Year Annual Research Report
未刊行資料の解読によるフレーベルの「ヘルバ・プラン」の研究
Project/Area Number |
09610259
|
Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小笠原 道雄 広島大学, 教育学部, 教授 (10053612)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂越 正樹 広島大学, 教育学部, 助教授 (80144781)
|
Keywords | フレーベル,フリードリヒ / ヘルバ・プラン / 国民教育施設 / フレーベルの学校教育学 |
Research Abstract |
Fr.フレーベルの「ヘルバ・プラン」の全容を解明するため、チューリンゲン州立アルヒーフ所有の未刊行資料23点等の収集ならびにその読解をおこない、さらに関係文献の調査から「へルバ・プラン」構想の形成過程を以下の時期に区分し、その全体構想を明らかにし、併せて同プランの挫折の原因を解明した。 (1) マイニンゲン公との直接交渉期(1827年12月〜28年4月) (2) 当局の審査期(1828年5月〜28年9月) (3) 仮協定の締結期(1828年10月〜29年3月) (4) プランの挫折期(1829年3月〜29年5月) その結果、従来のランゲ版資料では全く不明であった「ヘルバ・プラン」挫折の原因は、フレーベルとマイニンゲン宗務局との「仮協定の補足」に基づく生徒募集に関する検閲をフレーベルが事前に受けていなかった点(資料参照:本資料はパート・ブランケンブルクのフレーベル博物館に保存されているオリジナル資料のコピーである)から、宗務局の不信を買い(あるいはそれを口実にして)、仮協定補足の第5項目に違反するものとされ、ヘルバ・プラン(国民教育施設構想)が頓挫したことが明らかとなった。 なお、ヘルバ・プランに見られる国民教育施設の全体構想は、その付設機関として「養育と発達の施設」(3歳から6歳までの有産階級の孤児)を含み、本体は出身階層に関わりなく、7歳から12歳(「仮協定の補足」において17歳まで引き上げられた)の少年少女を対象とするものであった。修了後の生徒には、次の4つの進路が考えられた。(1)実社会に出て家政や家内職に従事、(2)技術学校、(3)ギムナジウム(カイルハウの一般ドイツ学園)、(4)自己陶冶のための施設や大学。このようにヘルバ・プランに見られる国民教育施設は、今日の「統一制学校」の先駆をなすものである。それは当時構想されたり、実施されていた他の学校をはるかに凌駕する、フレーベルの「学校」に関する先見性を示すものである。残念ながら、当時の社会・経済さらには政治情況とそれに対応すべく期待されたフレーベル自身の行為がきわめて独断的であったが為に実施に至らなかったと考えられる。
|
-
[Publications] OGASAWARA, Michio: "Die hermeneutische Betruchtung des Aufsatzes “ Erneuung des Lebens fordert das neue Jahr 1836 "(独大)" 人間教育・探究. 第11号. 115-120 (1999)
-
[Publications] 小笠原道雄: "フレーベル" 清水書房(人と思想センチュリーブック), 230 (1999)