1997 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末フランス「知識界」再編局面における社会的表象としての科学者
Project/Area Number |
09610260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池端 次郎 広島大学, 教育学部, 教授 (70033579)
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Keywords | 知識界 / 社会的表象 / 科学者 |
Research Abstract |
標記課題に関する参考文献・資料の調査・収集・整理に努め、研究を推進するとともに、渡仏の上、専門研究者のレヴユ-を受け有益な示唆を得た。研究の具体的成果は、以下の通りである。 1「知識界」の形態的変容に関する考察については、1870-90年代における自由業・知的職業就業者の量的増加および職業分野別著作者数の変化の統計的考察に基づき、(1)この時期に、「知識界」の規模が急速な量的膨張を遂げたこと、(2)「知識界」の中核を形成する社会的範疇が、旧来の伝統的文化生産・消費者層から文人・ジャーナリスト・詩人・教授層に置き代わるとともに、これら「知識界」の新たな構成分子が、職業範疇間および職業範疇内において相克・分裂していたこと、を指摘し、この時期における「知識界」が、形態的変容に伴う成長期の危機にあったことを明らかにした。 2「知識界」のイデオロギー的変容の考察(1)-文化生産者像の史的系譜の考察-については、18世紀以降における代表的文化生産者像の系譜(文人=フィロゾ-フ、作家、詩人等)を歴史的に考察し、これら文化生産者の理想的人物像が、もはやこの時期における「知識界」全体にとって支配的な社会的表象としての役割を果たしえず、「知識界」がイデオロギー的危機に陥っていたこと、したがって、「知識界」が新たな構造化を完結するには、これら代わる新たな文化生産者の理想像が不可欠であったことを明らかにした。 なお、上記研究成果の一端は、「19世紀末フランス「知識界」の形態的変容に関する一考察」の表題の下に、広島大学教育学部紀要1997に公表した。
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Research Products
(1 results)