1998 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末フランス「知識界」再編局面における社会的表象としての科学者
Project/Area Number |
09610260
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
池端 次郎 広島大学, 教育学部, 教授 (70033579)
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Keywords | 知識界 / 社会的表象 / 科学者 / 文化的正統性 |
Research Abstract |
標記課題に関する参考文献・資料の調査・収集・整理を継続し、研究を推進するとともに、研究結果のとりまとめを行った。なお、渡仏の上、専門研究者のレヴューを受け有益な示唆を得た。研究の具体的成果は、以下の通りである。 1, 「知識界」のイデオロギー的変容の考察(2)-「知識界」における支配的な社会的表象としての科学者の考察-に関して、(1),科学者という社会的表象については、代表的科学者に関するアカデミー・フランセーズ入会・歓迎演説の分析に基づき、科学者が「真理」の探究に伴う特殊な象徴資本の保有者と見なされ、またそれゆえに、科学の世界以外における政治的社会的権威をも賦与されるにいたったこと、(2),科学者崇拝の出現については、アカデミー・フランセーズ会員構成および国葬者名簿の分析に基づき、科学者という主知主義的理念を具現した人物こそ文化的正統性の担い手であるという認識が1880年代には社会的に定着したこと、および、1890年代中葉には、科学者が国民的崇拝の対象として定着したこと、(3),科学者の文化的準拠モデル化については、「自然主義」および「心理主義」の作家の代表的作品の考察に基づき、大学人のみならず「知識界」の重要な一翼を担う作家にとっても、科学者が文化的準拠モデルとなったこと、を指摘し、この時期に、科学者が「知識界」における支配的な社会的表象としての地位を確立したことを指摘した。 2, まとめ。以上、「知識界」の形態的・イデオロギー的変容に関する考察に基づき、成長期の危機にあった「知識界」の新たな構造化に際し、大学人が量的規模の拡大を通じてその一翼を担ったのみならず、とくに科学者という社会的表象の析出を通じて、イデオロギー面において決定的役割を果たしたことを明らかにした。
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