1998 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパにおける親子関係と子ども観に関する歴史人類学的研究
Project/Area Number |
09610277
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北本 正章 青山学院大学, 文学部, 教授 (10186273)
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Keywords | 子ども観 / 親子関係 / 家族構造 / 人口動態 / 子育て習俗 / 家族戦略 / 親代わり / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本研究の第2年度に当たる1998年4月から1999年3月にかけての研究活動の中心は、資料整理と資料分析にあてた。まず、これまでに収集した研究資料及び文献を、(1)人口動態史関係文献、(2)家族史関係文献、(3)子育て習俗・教育慣行関係文献の3つに区分、整理し、必要に応じて文献データとして集積した。次に、それぞれの分野における研究動向の大枠を掌握するために、代表的な研究書を渉猟し、子ども観の変容についての重要な学術上の論争については、この3分野にかかわる学術雑誌、紀要に掲載された論文も検討した。その結果、ヨーロッパの歴史人口学や家族の歴史人類学によって、人口動態が多産多死型から多産少死型に移行する時期、多産少死型から少産少死型に移行する時期のいずれにおいても、子供の誕生に対する社会経済的、宗教的および生命倫理学的な条件の「変容過程」と同時に、「恒常常態」もあることが明らかになった。こうした点についての中間考察の一部は、「社会構造の変化と子ども観の変遷」 (『環境情報科学』第27巻3号、環境情報科学センター刊、1998.8)として発表した。そこでは、(1)人間の育児能力が社会・文化的に学習される能力の一部であって、決して本能行動だけではないこと、(2)子ども数が変わることによって親が子どもに注ぐ愛情や教育投資が変化すること、(3)人口動態が上記の諸段階を経る要因のひとつに大人世代による子どもをもうけることについての「家族戦略」が考えられること、(4)伝統社会の子ども観・子育て習俗・社会化の機能の背景に「親代わりin loco parentis」の原理が働く社会的な人間形成の文化が存在していたことなどをオーヴァービューした。以上の諸点については、今後すすめる個別研究分野の成果を渉猟するなかでさらに詳細に分析する計画である。
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Research Products
(1 results)