1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパにおける親子関係と子ども観に関する歴史人類学的研究
Project/Area Number |
09610277
|
Research Institution | AOYAMA GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
北本 正章 青山学院大学, 文学部, 教授 (10186273)
|
Keywords | 子ども観 / 親子関係 / 家族構造 / 人口動態 / 子育て習俗 / 家族戦略 / 親代わり / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本年度は、前年度までの資料整理と資料分析に続いて、特にこの間収集した人口動態史関係、家族史関係、子育て習俗関係の3つの領域の文献を、時代区分として近代化の初期段階であるプロト工業化がはじまる以前と以後に分けて分析した。さらに近代化の時期については、近代家族が本格的に登場するヴィクトリア時代(アングロサクソン文化圏)、ヴィーダーマイヤー期(ドイツ語文化圏)における親子関係の変貌過程を、人口動態、ライフサイクル、役割イデオロギーなどの変化、、通過儀礼などの伝統的社会化機能(習俗)の解体、情愛的教育家族の登場といった観点から分析し、近代ヨーロッパにおける親子関係と子ども観に見られる教育イデオロギーの社会的制度化の背景で、このイデオロギーに適合的な生産様式の再編、人口動態の再生産メカニズムの発生、そして子どもに対する価値感情の諸形式の再編が進行したことが明らかになった。ヨーロッパにおけるプロト工業化以降の親子関係と子ども観の変貌は、資本主義文化の世界戦略の中で、次第に全世界的な規模でその再生産メカニズムを拡大し、若者・青年の自立の伝統的な形態を解体させた。この分析によって、晩期資本主義のマンパワー政策に組込まれた福祉国家型公教育制度の形式的拡充によって、近代初期に模索されていた個人の精神的自律と他者との共存モラルをともに放擲せざるを得ない子育て文化の発生メカニズムを解明する糸口を得ることができた。以上の点についての研究成果の一端は、教育思想学会編『教育思想事典』(勁草書房より2000年6月刊行予定、印刷中)所収の「しつけ」「社会史・心性史」「習俗」「小児医学」「人口動態」「通過儀礼」「年齢段階」の諸項目、および「歴史学から見た青年」(久世俊雄・斉藤耕二監修『青年心理学事典』所収、金子書房より2000年8月刊行予定、印刷中)でオーヴァービューしておいた。
|
Research Products
(1 results)