1999 Fiscal Year Annual Research Report
明治期における比較試験の成立と展開に関する研究-点数競争を支える教育風土の形成史の視点から
Project/Area Number |
09610304
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
橋本 昭彦 国立教育研究所, 教育政策研究部・教育政策史料調査室長 (80189480)
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Keywords | 小学試験法 / 比較試験 / 点数競争 |
Research Abstract |
1.比較試験成立過程に関する補充調査を行なった 前年度までの成果を継承して、成立期の比較試験の全国的動向につき補充調査を行なった。群馬・山梨を中心とする関東地方、青森・秋田・岩手を中心とする東北地方。京都・兵庫を中心とする近畿地方の史料を収集した。 2.比較試験成立過程の総合的考察を行ない、成果を発表した 総合的な考察により比較試験の成立過程を明らかにした。大要は下記の通り。 (1)行政・学校現場の動きを調査して比較試験の成立・展開過程を解明した。 →各府県によって情報収集法や立案過程が異なり、とくに知事・県令の意向が強く反映される事が分かった。 (2)比較試験における近世武家社会からの強い影響が解明された。 →試験の用語や実施形態(布告・出題=回答方式・会場・採点・評定法・褒賞)、において近世武家社会の試験制度の影響を実証しえた。また、比較試験の主な目的である「学業奨励」が、ほぼ一致することを明らかにした。 (3)比較試験における西洋教育からの部分的影響が解明された →試験結果の利用法として、英国などで行われていた補助金の配分額との連動(payment by result)の方法が一部の県で取り入れられていたことを明らかにした。 得られた知見の主要な部分を専門学会(第43回教育史学会・1999.10.於北海道大学)で「明治期における小学試験制度成立過程の研究〜比較試験(奨励試験)を中心として〜」と題する研究報告を行なった。 3.総括 明治前期の小学生を対象に行われた比較試験の成立過程をほぼ解明することができた。これにより明治前期の小学校に見られた点数競争の実態と、その背後にある期理念や教育観を分析することができた。ただ、交付額等の関係で、研究題目に掲げた「展開」過程までは十分に調査出来なかったため、今回解明・分析できた諸事実を、日本の近代学校史全体の流れの中でどのように説明できるのかについては、今少し検討を重ねたい。
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