1998 Fiscal Year Annual Research Report
中国経済の市場化における高等教育改革についての実証研究
Project/Area Number |
09610306
|
Research Institution | National Institute of Multimedia Education |
Principal Investigator |
苑復 傑 メディア教育開発センター, 研究開発部, 助教授 (80249929)
|
Keywords | 高等教育改革 / 市場化 / 大卒の就職 / 高等教育政策 / 法規則 |
Research Abstract |
研究計画に基づき、中国の高等教育の市場化改革における大卒の就職政策、大卒就職のプロセス及び実態と問題点の分析を行なった。研究成果は1998年度の日本比較教育学会で研究発表をし、『悠峰職業科学研究紀要』第6巻に、『二十一世紀中国発展建設書』経済科学出版社(1998)に論文を掲載した。 1990年以後、計画経済から市場経済への移行に伴って、中国の社会・経済構造は大きく変わり、高等教育においても市場化を中心とした改革がドラスティックに行われてきた。1997年に大学入学者に対して学費徴収制度が全面的に導入され、同年に、国家教育委員会によって「普通高等教育機関卒業生の就職に関する暫定規則」が公表された。これにより、従来の政府による「入学者統一募集と卒業者統一職場配置」制度が廃止され、卒業生側に職業選択の自主権を賦与する就職制度に転換した。 上記「就職規則」は10章55条から構成されている。その内容を概観してみると、計画経済体制下での大卒者就業モデルからの脱皮と市場経済体制下の大卒者就業モデルの導入の軌跡が描かれている。改革前の計画モデルでは、政府が社会・経済計画に基づいて、学生募集計画、卒業者職業配分計画、生産計画を制定する。これらのっ計画は中央の指令として、雇用機関や大学や卒業生に通達され、各セクターが自主性を持たなく、ただ政府の計画にそって大学は卒業生を派遣し、雇用機関は受け入れる。これに対して、改革後の市場モデルでは政府が市場需給シグナルに基づいて、労働力養成プログラム、労働力需要予測計画をたてる。雇用機関も大学も卒業生も市場シグナルに感応しながら、主体的に行動を行なう。政府は市場メカニズムに直接に介するのではなく、政策、制度、法律を通して労働市場とかかわりをもち、社会・経済発展の全体目標を実現していく。 しかし、大卒の就職実態をみると、経済発展の地域的不均衡、国営企業の機構改革の難航、人事制度改革の限界、労働市場の制度制約といった社会の構造的諸問題の制約をうけ、大卒の就職過程においては、市場メカニズムが導入されたものの、政府計画に依存する大卒就職の制度的側面が当面生き残らざるを得ないところにある。
|
-
[Publications] 苑復傑: "中国経済の市場化と大卒者の就職" 悠峰職業科学研究紀要. 6. 77-91 (1998)
-
[Publications] 苑復傑: "新世紀中国高等教育的発展与課題" 二十一世紀中国発展建議書. 389-395 (1998)
-
[Publications] 苑復傑: "二十一世紀中国発展建議書" 経済科学出版社(陳偉主編), 405 (1998)