1998 Fiscal Year Annual Research Report
ウタリ政策転換期の日本社会におけるアイヌ民族像の変化についての研究
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09610317
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
細川 弘明 佐賀大学, 農学部, 助教授 (70165554)
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Keywords | アイヌ / 先住民族 / マスメディア / 民族政策 / 文化復権運動 / ステレオタイプ(偏見) / 人種関係 / 多文化主義 |
Research Abstract |
1. 日本資料通信社、アイヌ文化交流センター、国連先住民族の10年連絡会、シサムの会等を通じアイヌ民族に関する報道記事を収集した。昨年度までは網羅的に収集していたが、今年度から3段組以下の記事は省略した。記事内容を分析し、キーワード、主題分類、媒体分類、資料評点などを付加し、昨年度のデータベースを更新した。今年度分、約1,200点(新聞記事1,051、雑誌記事136、その他約20)を処理した。資料評点v=3以上のもの(約650件)は、ハードコピーを主題分類424項目に応じてファイリングした。 2. アイヌ文化振興法施行2年めに入り、推進機構の主催によるものもそうでないものも含め、各地での取組み内容が多様化するとともに、一過性イベント以外の試みが見られ始めた。大阪生野区のP校の森林トラスト運動への参加(資料980316v2)、帯広のI校の本格的学習企画(資料980320v3)など注目に値する。行政サイドからの取組みが増加したのも顕著な動向であった。これらの動きを地方紙はよく紹介しているが、一方、市民運動系の媒体ではアイヌ民族に関する扱いが著しく減少している。 3. 振興法に対して昨年度は静観する傾向にあったアイヌ民族側から「共有財産」問題の解決を求める議論が急浮上したのも今年度の重要な展開である。旧法における未処理案件だった以上、起るべくして起った論争であるが、この問題を「植民地法」の観点から定位する論説が多かった点は重要である。開拓史における民族関係に新たな光をあてる実証的資料の紹介が増えてきたのも、おそらく通底する現象であろう。今後の動向に留意が必要である。 4. これとは別に文脈で特筆すべき傾向として、首都圏アイヌ民族の若手層の活動が対内的にも対外的にも活発化したことが挙げられる。推進機構主導の施設とは異なる方向性をそなえた動きとして注目される。
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[Publications] 細川弘明: "先住民族と環境保全主義の切り結ぶところ" 現代思想. 26(6). 260-263 (1998)
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[Publications] 庄司博司(編): "ことばの20世紀" ドメス出版, 322 (1999)