1999 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会における老人と死をめぐる民俗についての調査研究
Project/Area Number |
09610321
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Research Institution | NATIONAL MUSEUM OF JAPANESE HISTORY |
Principal Investigator |
新谷 尚紀 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80259986)
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Keywords | 宮座 / 両墓制 / 長老 / 八人衆 / 農家 / 商家 / 老舗 / 祇園 |
Research Abstract |
平成11年度は、前々年度以来の奈良市の旧添上郡大柳生村の村落と京都市東山区祇園北側の町内への民俗調査の最終段階として補充調査を実施した。すでに指摘しているとおり、奈良市の大柳生は、宮座と両墓制のみられる村落であり、八人衆、二十人衆と呼ばれる長老たちを中心とする神祭りに興味深い伝承が存在する。京都市東山区祇園北側は現在花見小路界隈と通称されており、祇園八坂神社の門前におよそ正徳年間以降開発され展開してきた古くからの繁華街である。農村と都市という日本の伝統的な地域社会の典型例とみることができる。前年度までの調査で一定の程度まで民俗誌作成のための情報資料が収集されているが、今年度はさらに大柳生における継続調査と京都市東山区祇園北側についての歴史資料の収集と数少ない地元出身者でかつ現在もこの地区に居住している高齢者への聞き取り調査を実施した。予想されるとおり農村の大柳生の老人の場合、農家の定着率が極めて高くそれにより地域社会における家の相続者の定着率も当然高い。したがって高齢者たちは地元の氏神の宮座祭祀においても長老衆として大きな役割を果たしており、それは年齢順に地域のすべての老人が共有できる境涯でありそれが個々人の生きがいとなっている。一方、都市の繁華街の祇園北側のような商業地域の場合、商家の定着率が低く人物の交流も家を単位とするよりも職業上の関係による部分が大きい。したがって、地元の大きな神社である祇園八坂神社の祭礼においても老舗としての商家の自覚と個人の才覚とで一定の役割を担う老人がいる一方では、すでに他出したりまた他所から移入したりした老人たちも数多く居住しており、地域のすべての老人が活躍できているわけではない。現在、このような集められた情報をまとめる作業を進行中である。
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