1997 Fiscal Year Annual Research Report
奈良・平安時代の都市を中心とした消費と手工業生産に関する研究
Project/Area Number |
09610339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
櫛木 謙周 京都府立大学, 文学部, 助教授 (60161626)
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Keywords | 古代都市 / 平安京 / 物価 / 宅地 / 手工業生産 / 消費 / 流通 |
Research Abstract |
古代の都市を中心とする消費の動向、流通・生産の全体的な構造、及びこれらの歴史的変化を解明するために、本研究では「物価」の動向に注目することにした。今年度は2年計画の1年目にあたるが、コンピュータを用いて平安末(文治元年以前)までの物価データの入力を中心に基礎的作業を行った。古記録以外の編纂記事・古文書・木簡等については入力をほぼ終わり、データの確認作業を並行して行っている。これを用いての本格的な分析作業は来年度以降の課題であるが、本年度は平安京の都市としての消費を住環境において把握する一環として、宅地売買史料の分析を行った。前記の価格データベースの全体的分析により、三条・四条・七条地区の宅地細分化と価格高騰の状況が特に12世紀以降進行することが明らかになった。この点は従来からも指摘されていたが、田地価格と比較することなどを通じて、平安京宅地価格高騰が浮き彫りになった点が重要である。例えば「七条令解」とそれに続く「七条一坊家地手継券文」が存在するが、前者の最後=正暦4年(993)年の文書と、後者の最初=永久3年(1115)の売券は、いずれも米でで価格が示されているが、面積が1/4になるとともに、単価が約180倍となっている。米の価値変動についての検討を必要とするが、これが決して突出した事例でないことは先述のデータからわかる。すなわち平安時代後期の資料を多数含む米での京内宅地の平均価格は戸主単価約130石、当時の一般田地の戸主換算平均価格2.45石の50倍以上である。ちなみに950年以前の田の銭での戸主換算平均単価は540文で、宅地の2500文/戸主は約5倍にすぎない。この間の「都市」としての平安京の成熟のあり方を如実に反映したものかと思われるが、その具体相について、大規模造営の展開や受領の投機的売買、商工業生産などの方向から検討してゆく予定である。
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