1998 Fiscal Year Annual Research Report
奈良・平安時代の都市を中心とした消費と手工業生産に関する研究
Project/Area Number |
09610339
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
櫛木 謙周 京都府立大学, 文学部, 助教授 (60161626)
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Keywords | 都市 / 消費 / 絹 / 米価 / 沽価法 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、古代の物価データの収集・整理に努めるとともに、都市の消費動向について、「衣」の側面と「食」の側面からの分析を中心に行った。 まず衣服材料として絹織物に注目した。一般の絹(凡絹)の価格が平安時代の中期から後期にかけて大幅に下落することは、売券の土地価格の変化などから指摘され、それを前提にして官物収取体系の改編などについて論じられてきた。しかし肝心の絹価格そのものの考察はあまりなされてこなかったので、収集したデータからこの点の確認を行うことができた。凡絹の価格下落の理由として、絹生産の増大や都市への流入量の増加も考えられるが、高級な八丈絹などが多用されることにより、下級品の価値が押し下げられたと考えられる。また、〓と絹との違いについて価格面から検討を行い、両者に大きな違いが認められないことが知られた。〓と絹とは、糸質による品質の差異があり、下賜品としては差等があったが、それは必ずしも「価格」とは連動しなかった可能性が考えられる。 「食」の中心をなす米の価格については、従来から比較的研究が進んでいたが、8世紀が中心であり、奈良・平安時代を通じての考察は殆どなかった。平安時代の米価が1石=1貫文を前後して変動することを個別に検討しつつ、一方では10世紀中頃からそのレートが沽価法として以後長く基準となったことが注目される。少なくともこの時期の沽価法が実際の物価水準を踏まえており、また実際に封物等の換算基準になったことが確かめられると共に、臓物(盗品)の評価にも用いられたことが知られた。また、稲と穀との公定換算率1束=1斗の関係が、価格の上では殆ど反映されていないのに対して、稲と米との公定換算率1束=5升の関係は、稲と穀の場合よりも相対的に価格に反映されていることが知られた。これは稲・米が現物貨幣であったことによると考えられる。
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