1997 Fiscal Year Annual Research Report
戦時体制下日本における産業の再編成と労働力の再配置
Project/Area Number |
09610343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
松沢 哲成 東京女子大学, 文理学部, 教授 (30086318)
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Keywords | 満州 / 華北 / 労働力移動 / 把頭制 / タコ部屋 / 監獄部屋 / 強制連行 / 大東亜共栄圏 |
Research Abstract |
主として撫順炭鉱労働事情について専門的に研究している元吉林大学教授・蘇崇民さんや中国行政学院教授・傳波さんとの交流を通じ、30-40年代当時の労働者の移動とその支配の実態について多くの原史料を紹介され、また貴重な意見を伺うことができた。この分野についての本格的な研究は、原史料ともともども、日本国内ではきわめて少ないのが現状なので、裨益するところがきわめて大であった。すなわち、当時は華北から満州への移動が封建的な把頭制によって担われ、そうした労働者の作業監督なども把頭によって実施されていたのだが、のちにはその制度も変容し、満鉄会社の直接的な管理の側面がより強くなった、というのが二氏の意見である。まだ俘虜の使用もしきりに行われたという。そういった満州における試みは、40年代半ば以降日本がしきりに行った、朝鮮人・中国人の日本内地への強制連行-重労働強要に際して大いに参考とされた、という。以上のような史実が、今回新たに、また史料に基づき詳細に、判明したのである。 日本内においては、それ以前、土木・建築・荷役などにおいて「タコ部屋」「監獄部屋」などの監禁重労働強要方式が多用されていた。それが中国人などの日本国内への強制連行-重労働強要に際し直接の先例とされたということが、新史料によって証明された。 以上の背景には、「大東亜共栄圏」という巨大なブロックの中で、資源・原材料や人種の違いを重点としてそれまでの産業を再編成する志向、あるいは圏内諸民族の「適性」に応じて人々つまり労働者を配置替えしていこうとする志向、などが顕著に認められる。 このように大筋はやや見えてきたのだが、詳細な経緯や過程、あるいは関係機関や担当者等の企図ないし意図などは、まだまだ解明が不十分である。引き続き国内外の史料の発掘につとめ、全貌は追っていきたいと考えている。
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