1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610348
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Research Institution | Teikyo-Heisei University |
Principal Investigator |
村瀬 信一 帝京平成大学, 情報学部, 助教授 (10192775)
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Keywords | 政党の官僚評価 / 官僚の政党入り / 官僚から情報収集 / 選挙法改正 / 伊藤新党 / 単記無記名投票 |
Research Abstract |
本研究においては、当初考えていた目標を達成することは残念ながらできなかった。いくつかの角度から、近代日本における官僚を政党との関係の歴史的展開について見通しを開くというのが本研究の趣旨であったが、政党の官僚に対する評価が当初から相当に高かったこと、官僚の政党入りについては、明治の末期まではあまり顕著ではなかったが、大正に入って結成された立憲同志会が官僚出身者を多くメンバーとし、それに対抗して立憲政友会も官僚出身者の吸引に積極的になったこと、政党は官僚から多くの情報を吸収し、議員立法に際しては相当程度官僚の協力を仰いだが、現在のように大臣答弁、さらには議員の質問まで官僚が作成するような状況ではなかったこと等の諸点を明らかにし得たにとどまった。 唯一発表できた成果は『史学雑誌』第百八編第十一号に掲載された「選挙法改正問題と伊藤新党」である。同論文において、日清戦争後の明治三十三年に立憲政友会が結成されて官僚閥との協調体制をつくり上げる上で、選挙制度改革が重要な意味を持ったことを明らかにした。同年第二次山県内閣によって断行された衆議院議員選挙法改正は、通説とは異なり、当時「国民政党」をつくろうと考えていた伊藤博文が、その準備のために山県内閣に実行を迫ったものであった。伊藤は、単記無記名投票採用等により選挙区を一新し、そこから選出されてくる代議士によって、国家的利害を担いうる、真の国民政党をつくり官僚との協調体制を構築しようとしたのであった。
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