文録慶長の役講和関係史料の研究-「事大文軌」収録文書のデータベース化

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09610352
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Fukuoka Jo Gakuin University
• Principal Investigator: 佐島 顕子 福岡女学院大学, 人文学部・日本文化学科, 講師 (40225173)
• Keywords: 事大文軌 / 文録慶長の役 / 朝鮮

Research Abstract

文録慶長の役(1592〜98)の経過(特に休戦期・講和交渉の進展)を明らかにするために、朝鮮王朝の外交史料集成である事大文軌を検討する。現在は研究の1年目を終了した時点であるので結論を出すことはひかえたいが、従来の文録慶長の役研究が日本側史料あるいは朝鮮王朝実録を基礎においたものであったのに対し、朝鮮・明関係からの視角を提供しえると思われる。朝鮮王朝と明政府との往復文書を収録したこの事大文軌からは、王朝の外交方針・明軍の戦略、講和論理が伺えるほか、軍糧の収奪、日本の大名軍からの逃亡者状況、大名軍の移動状況、日本から現地軍に送られた秀吉の命令、増援指示、など戦況が詳細に読みとれる。特に、日本軍の朝鮮からの完全撤退を求め、明に派軍を要請する朝鮮王朝と、秀吉を冊封し明の華夷秩序におさめることで軍をひきあげたい明政府とのあつれきは注目されるべきものである。朝鮮王朝実録が次代に編宴された記録であるのに対し、文書集成である事大文軌の価値を指摘したい。そして事大文軌収録文書の王朝での位置(対明文書が発された背景、経緯、明よりの文書のうけとめられかた)を、王朝実録あるいは「西〓集」「梧陰遺稿」などの個人文集とすりあわせることによって明確にすることを今後の課題としたい。