1998 Fiscal Year Annual Research Report
15〜18世紀における中国の首都北京の社会史的研究
Project/Area Number |
09610361
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
新宮 学 山形大学, 人文学部, 助教授 (30162481)
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Keywords | 北京遷都 / 永楽帝 / 北京システム |
Research Abstract |
国内外の北京遷都研究の研究史を整理する必要から、「北京遷都研究序説(一)」と題する論文を公表した。 論文では、1930年代以来現在に至るまでの北京遷都に関する諸研究を、以下のような3つのアプローチに大別して整理した。 1, 「靖難の役」研究からのアプローチ 2, 初期明朝政権確立過程からのアプローチ 3, 近世社会史や東アジア史の展開からのアプローチ 第1のアプローチは、北京遷都をめぐるさまざまな問題群を燕王あるいは永楽帝の時代に閉じこめてしまう傾向を持っていた。第2のアプローチでは、洪武・建文・永楽と続く初期明王朝の歴史的展開を、断絶か連続かを判断する一指標として遷都問題が取り上げられたにすぎず、北京遷都の歴史的過程に即した検討がなされてきたわけではなかった。近年になってあらためて注目されている第3のアプローチは、従来の断代史的研究や一国史的研究の問題性を見直し、漢族中心主義に陥りがちな中国史研究を相対化しようとする志向を持っている。 以上のような研究史の展開は、今後、北京遷都の歴史的意義を、初期明朝政権の確立過程のみならず、元・明の連続性、ひいては近世社会史の展開というような垂直軸と、東アジア世界の展開や諸民族の動向というような水平軸の交差する中に位置付けることの必要性を示している。
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