1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610364
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古畑 徹 金沢大学, 文学部, 助教授 (80199439)
|
Keywords | 唐会要 / 玉海 |
Research Abstract |
王溥『唐会要』は唐代史研究における最も基本的な史料の一つであるが、現存するテキストは成立当時の姿をそのまま伝えているわけではなく、伝世の過程で多くの脱誤と数巻の欠失を生じた。本研究は諸抄本の調査や他史料に引用された『唐会要』逸文の調査を通して、脱誤と欠失を可能な限り補い、本来の姿を復元することを目指すものである。 今年度は、『唐会要』逸文が多く存在する『玉海』『事物紀原』『資治通鑑胡註』『資治通鑑紀事本末』『太平広記』『太平御覧』などを調査し、所引記事をカード化した。またカード化に当っては、現存する『唐会要』の諸テキストとの異同を調査し、その詳細をカードに付記した。この作業は『玉海』については既に完了しているが、その他についてはまだ7割程度しか完成していない。また『唐会要』のテキストクリティックのために、諸テキストを一覧にしたカードの作成作業は、予定よりやや作業が遅れており、まだ一部の巻をカード化し終えた段階である。 これらの作業を行なう中で、この作業の成果として、『唐会要』の流伝過程が少しわかってきた。現在その成果は「『唐会要』の流伝に関する一考察」という題目で発表予定である。この論稿では、北宋代から『唐会要』には抄本と刻本の二系統のテキストがあったこと、抄本は明初まではほぼ完本で伝わったこと、伝わった抄本は南宋高宋期の抄本であること、通行本のもととなった殿版『唐会要』は、欠失と節略のある刻本(北宋期のものかどうかは不明)を底本に、四余録本と他史料を利用して校訂したため、抄本系とも大幅に異なる独特のテキストになってしまったこと、などを明らかにしている。
|