1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610364
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古畑 徹 金沢大学, 文学部, 助教授 (80199439)
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Keywords | 唐会要 / 玉海 |
Research Abstract |
王博『唐会要』は唐代史研究における最も基本的な史科の一つであるが、現存するテキストは成立当時の姿をそのまま伝えているわけではなく、伝世の過程で多くの誤脱と数巻の欠失を生じた。本研究は諸抄本の調査や他史料に引用された『唐会要』の逸文の調査を通して、脱誤と欠失を可能な限り補い、本来の姿を復元することを目指すものである。 今年度は、調査によって明らかになってきた『唐会要』の流伝過程を、「『唐会要』の流伝に関する一考察」と題して公表した。そこで明らかにしたことは、以下のとおりである。 1. 『唐会要』は北宋期から少くとも2系統の異本が存在し、一つは抄本として伝えられていく完本、もう一つは1046年以前に蘇州で刊行された刻本である。北宋・南宋を通じて前者の方が後者より広く流布した。 2. 『唐会要』の抄本は、明初まではほぼ完本として存在したが、明代の間に大きく欠損した。その中で、南宋高宗期の抄本の系統を引くテキストが、卷7〜10、卷49後半、卷92第2項〜卷94などを欠損してから、広く伝写され、多くの明抄正本・清初抄本の基になった。 3. 宋刻本のその後は不明確だが、これと殿版の底本と位置づけられている刻本が、もし同一だとすれば、この刻本は記事を抄録した節本で、南宋から明の間に大幅な欠損が生じ、清初には少なくとも卷7〜10、卷94が欠失していた。 4. 殿版は欠損のある節本を底本と位置づけ、四庫本や他書で校訂・増補を行なったが、諸書所引の『唐会要』の記事を利用しなかったこと、2系統のテキストを混在させたことなどから、殿版は2系統のいずれとも異なるテキストになった。 5. 『玉海』所引の『唐会要』の記事は1060、『事物紀原』の所引の記事は92、『賢治通貨考異』所引の記事は20、『太平御覧』所引の記事は32、『太平広記』所引の記事は31、存在し、うち逸文の可能性があるものは、それぞれ119、5、5、2、2、である。
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