1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610377
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関内 隆 東北大学, 大学教育研究センター, 教授 (50125473)
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Keywords | 保守主義 / J.チェンバレン / 自由貿易 |
Research Abstract |
20世紀初頭のJ.チェンバレンによる関税改革運動をめぐって展開された保守主義イデオローグの自由貿易政策批判の内実とその特質を把握することを本年度の課題とした。そこで、19世紀末以降の社会経済的変化に対する現状認識とその特質を明らかにするため、J.チェンバレンの演説集、関税改革同盟のパンフレット・年次報告書、W.カニンガム、W.アシュリー、W.A.S.ヒュインズ等の時論的評論を検討する作業を行った。 これらの検討作業を通して、世紀転換期の保守主義には次のような現状認識を共通のものとしていることが明らかとなった。19世紀中葉以降のイギリスを取り巻く世界経済情勢の大きな変化によって、自由貿易政策が国益促進ではなく、イギリスの経済と社会にマイナス効果をもたらし始め機能を変化させているという自由貿易への現状認識、さらに、自由貿易思想とレッセ・フェール主義の根底にある機械論的な社会把握がイギリスの採るべき政策にとって隘路となっているとする当時の正統的経済学への批判がそれである。よって、保守主義思潮の政策志向は、自由貿易政策擁護の背後にある個人主義的抽象規定とコスモポリタニズムに対して、有機体的な社会の捉え方とそれをもとにした国家(=帝国)意識を対峙する議論を展開していくことになった。 19世紀末から20世紀初頭におけるバーミンガム、ミッドランド地域の地域的動向をさらに立ち入って検討する中で、地域という政治の底辺レベルから全国政治に向けられる視線の有り様と、こうした保守主義思想の潮流との関わり、その歴史的な位置づけを考察していくことが次年度の課題となる。
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