1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610379
|
Research Institution | AKITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
斎藤 泰 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (00047888)
|
Keywords | 原スイス永久同盟 / 渓谷共同体 / 神聖ローマ皇帝 / 皇帝特許状 / 同盟文書 / 八州同盟 / ハープスブルグ家 / 十三州同盟 |
Research Abstract |
13,4世紀帝国国制の転換の中で、原スイス永久同盟の盟約と更新、その諸同盟への発展については、皇帝(国王)特許状と、永久同盟をはじめとする諸同盟の同盟文書から、国制史的に考察してきた。まず、13,4世紀の中スイス地方の渓谷の国制史的地位を論証した。その結果、各渓谷は、常に皇帝・国王との結び付きを堅持しながら、渓谷の指導層と共同体の利害を自ら擁護するように努めていた。原スイス永久同盟の盟約・更新から諸同盟への発展においても、皇帝・国王との直結関係を求め、皇帝・国王の即位ごとに、その特許状の発給を繰り返し求めた。14世紀以降、領域拡大政策を強力に押し進めていたハープスブルク家と競合しながら、各渓谷と、諸同盟を盟約した有力都市が、それぞれ、あるいは諸同盟として独自の領域支配に乗り出すのにも、皇帝(国王)特許状は大きな役割を果たした。 また、13,4世紀の帝国内の不安定な政治状祝の中で、いかに渓谷内外の平和を維持するか、さらにいかに帝国直属性と裁判上の特権を堅持するか、という重大な事態に直面して、盟約されたのが、1291年の原スイス永久同盟であり、その更新であったことを、同盟文書の内容分析から論証した。この永久同盟は、14,5世紀以降、ハープスブルク家の領域支配に対抗することで、同じ利害状況になった近隣の有力都市と連携して、より広域のラント平和を相互に誓約・更新した。それが、1353年の「八州同盟」であり、1513年の「十三州同盟」である。こうして、内外から「スイス国あるいは「スイス人」としてのイメージが、15世紀中頃から次第に鮮明になっていった。まさにスイス連邦のはじまりである。 今後の課題としては、スイス連邦の成立と発展を、渓谷と都市の政治的発展として、換言すれば、皇帝・国王やハープスブルク家に対する渓谷と都市の同盟政策として捉えるためにも、都市・農村関係史という論点が極めて重要である。そうした国家形成の過程を、社会の根底を担う都市・農村関係史と見なし、そのためにも、スイス国土と中スイス地方の地誌的、地政的および風土的背景を十分に念頭に入れた地理学的考察を大幅に取り組むことも、不可欠な視点となる。
|