1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610385
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
高畠 純夫 東洋大学, 文学部, 助教授 (70221364)
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Keywords | ギリシア / アンティフォン / 弁論 / 裁判 |
Research Abstract |
本年度の研究は、主に二つの面から成立っていた。一つは、第5番弁論にかかわる研究であり、もう一つは、第一番弁論から訳を練直し、きちんとした註釈を施す作業である。 前者の第5番弁論にかかわっては、外人と裁判との関係、殺人裁判のあり方に関する問題などが、考えるべき問題として出てくる。それらを考える際に、第一に重要となる史料は碑文、特に民会決議を記した碑文である。そこでまず、『ギリシア碑文集成』Inscriptiones Graecaeのうち関連しそうなものを読むことにつとめた。その場合、関連を広くとらえて、約270枚を丹念に読んで訳し、コンピューター上のカードに分析を書込んでいった。この時、スキャナが史料解析に威力を発揮した。この分析の成果は来年度5月の西洋史学会で「前5世紀アテナイにおける外人と裁判--アンティフォン第5番弁論解読試論--」の題で発表する予定である。また、それに付随する成果として夏には、「クセノディカイとナウトディカイ--前5世紀アテナイにおける外人と裁判--」を本年度の紀要に書いた。 後者については、先年イギリスで実際に手にとって調べた写本から得られた知見なども盛込みつつ、訳を練直していった。その際、訳の確定には、これまで出ているさまざまな研究成果を調べる必要があり、購入した書籍が役に立った。たとえば、裁判の場で現れる呼びかけ語についても、E.Dickey,Greek Forms of Address,Oxford,1996は多くの用例を調べて結論を出しており、微妙なニュアンスの違いを知るのに役立った。また、この場合も、さまざまな成果を手早く整理するのにスキャナが威力を発揮した。
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