1998 Fiscal Year Annual Research Report
アングロ・ノルマン・イングランドにおけるフラタニティの構造と地域的社会結合
Project/Area Number |
09610389
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
|
Keywords | 中世 / イングランド / フラタニティ / ラムゼイ / 農村の宗教ギルド |
Research Abstract |
今年度の科学研究費補助金による研究は、主として三つの活動に集約される。 1. 昨年度〈平成9年度〉、リーズ大学〈連合王国〉で開催された第4回国際中世史学会での報告「11・12世紀ラムゼイ修道院におけるフラタニティ〈祈祷兄弟盟約関係〉」は、その後の研究を踏まえて、オランダの研究者ヘンク・テュニス Henk Teunis教授らと共同で出版する論文集『世俗と教会の権力』Secular and Ecclesiastical Power(Brepols,1999)の中の論文“The Fraternity of Ramsey Abbey in the eleventh and twelfth centuries'としてこの春刊行される。内容は、イングランド東部ハンティンドン州にある古刹、ベネディクト会のラムゼイ修道院の史料を分析し、そこから、11世紀後半から12世紀前半にかけて、修道院が修道院周辺それもかなり広範囲な地域にまたがって、在地の有力者と埋葬と死後祈祷を通しての濃密なフラタニティ(檀家的組織という日本語は正確ではないがその性格をよく示している)を形成していたこと、場合によっては農村の宗教ギルドともフラタニティを取り結んでいたこと(この「事実」はいままでほとんど注目されてこなかった幸運な「発見」であろう)、在地の有力者が見返りとして贈与した土地や十分の一税に対する修道院の権利は、当の有力者が元来保有していた権利に規定されること、などを解明したものである。 2. 今年度から、ウエールズ大学のエアード博士Dr William Airdと、共同で中世イングランドにおけるフラタニティ関係の史料整理を開始した。現在イングランド北部ダラムDurhamに関するデータの整理中である。 3. 平成10年7月リーズ大学で開催された第5回国際中世史学会で「動く森のように」という論文報告を行った。内容はカンタベリ聖オーガスティン修道院の偽文書に地域共同体の共属意識の発現をみたものである。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 鶴島 博和: "ネイション-研究史・総合原理・「世界」における位置" 歴史評論. 584. 56-64 (1998)
-
[Publications] H.Tsurushima: "The Fraternity of Ramsey Abbey in the eleventh and twelfth centuries" Secular and Ecclesiastical Power. Brepols(印刷中). (1999)