1997 Fiscal Year Annual Research Report
古典期ギリシア・ポリスにおける対外政策の決定と党派
Project/Area Number |
09610396
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中井 義明 同志社大学, 文学部, 助教授 (70278456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅香 正 同志社大学, 古代学研究所, 教授 (70066059)
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Keywords | 古代ギリシア史 / デロス同盟 / アリステイデスの査定 |
Research Abstract |
本年度はデロス同盟結成時に定められたアリステイデスの査定について研究した。もちろん文献史料が伝える460タラントンという貢税金額と碑文研究から主張されている貢税金額との開きをどう理解すべきかという重要な問題があるが、本年度の研究ではどのような過程を経て貢税金額査定にいたったのかという問題に着目した。各種文献史料は比較的短期間にアリステイデスが単独で査定したと語っている。同盟国の経済力を調査し、艦舶提供国と貢税提供国の二つの区分を行い、艦舶提供国に関しては提供すべき艦舶の量を、貢税提供国に関しては貢税提供金額を各同盟国毎に査定し決定するという作業量は莫大なものである。これら一連の作業がティモステネスのアルコンの年、前478/7年、に着手され完了する為には同盟諸国の積極的協力がなければ不可能である。つまり各同盟国が自主的に、艦舶提供国と貢税提供国の何れかを選択し、自国の経済力を自主申告し、アリステイデス或いはアリステイデスを長とする委員団による査定を受けいれる、と。この背景には同盟結成に向けての同盟諸国の熱意があった。同盟結成時における平均的負担金額(3T強)は所謂「アテナイ貢税表」に記載されている平均的負担金額(2T強)よりもかなり過重である。それにも拘わらず同盟諸国はアリステイデスの査定を歓迎し、公正であると称賛したと伝承は伝えている。しかしこのような熱意の背景には同盟諸国内での深刻な対立があった。エリュトライとの条約碑文にはそのような党派間の緊張関係を窺わせる条項が存在している。ここからデロス同盟発足時における各ポリス内での対外政策を巡る対立、政治指導権を巡る党派間の対立を読み取っていくことができた。次年度はパウサニアス事件に焦点を絞り、ギリシアの国際政治におけるスパルタとアテナイの対立、そしてその背景にある同盟諸国の動きと党派の状況を解明していきたい。
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