1997 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代における首長層の居館と奧津城の関連性に関する研究
Project/Area Number |
09610403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
橋本 博文 新潟大学, 人文学部, 助教授 (20198691)
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Keywords | (豪族)居館 / 古墳 / 堀立柱建物 / 竪穴式住居 / 外来系土器 / 古墳時代前期 |
Research Abstract |
1年次目として、栃木県氏家町四斗蒔遺跡の2つある豪族居館のうち、西側の1号居館の内郭部分の発掘調査を実施した。その結果、内郭部は東西の出入り口部を結ぶライン上に検出された塀によって南北に2分割されていたことが判明した。さらに、南内郭部には4軒の中小規模の竪穴住居址が中央の中庭状の空間を取り巻いて左右対称に計画配置されていたことが明らかになった。一方、北内郭部には中央に、東西8m、南北7.4mの大型竪穴住宅址が棟を東西に向けて置かれ、東西辺の中央に壁柱穴の棟持ち柱が確認された。この大型竪穴住居址は焼失しており、住居の構造材等の炭化物と焼土が認められた。また、床面が比較的硬化しておらず、炉もあまり焼けていないので、短期の廃絶が想定された。大型竪穴住居址の内部からは栃木県内2例目の畿内系タタキ甕が出土し、遠隔地との交流がうかがわれる。大型竪穴住居址の東隣りには小型の竪穴住居址が1軒確認された。他方、西側には倉庫か祭殿とも考えられる2間×4間の堀立柱建物址が南北軸で検出された。その他、大型竪穴住居址を切るほぼ同規模の古墳時代前期末の竪穴住居址が1棟と3軒の竪穴の切り合いが確認された。また、堀立柱建物址がもう1棟、大型竪穴住居址と切り合うことが判明した。この建物址には焼土が伴い、平地式住居の可能性も考えられる。なお、大型竪穴住居址に炉の存在や器種の偏りのない出土土器から居住性が確認された。北内郭の首長の私的な居住空間と南内郭の従者の居住空間等の別があったことが示唆される。出土土器は北西約400mの所に位置する前期古墳、お旗塚古墳とほぼ同時期のもので、両者の対応関係が想定される。今回の調査で、古墳時代前期に溯る地方の小豪族の居館のほぼ全容が明らかになったと言っても過言ではなかろう。来年度は2号居館の年代の検討とお旗塚古墳の墳形、墳丘規模の追求を行いたい。
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