1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
古瀬 清秀 広島大学, 文学部, 文部教官助教授 (70136018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安間 拓巳 広島大学, 文学部, 文部教官助手 (40263644)
西別府 元日 広島大学, 文学部, 文部教官助教授 (50136769)
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Keywords | 鍛冶実験 / 鍛冶炉 / 鉄滓 / 野多目遺跡 / 博多遺跡 / 窪木薬師遺跡 |
Research Abstract |
本年度は鍛冶実験及び各地の鍛冶関係の遺跡出土品の集成、文献の収集を行った。鍛冶実験では鍛冶炉の築炉から精錬,鍛錬,火造りに至る一連の鍛冶工程を行い、鉄鍬,鉄斧,鉄鎌を製作した。この際生成した鉄滓を各工程ごとに分類し、実際の遺跡出土品と比較検討した。出土考古資料の集成については鍛冶炉,鉄滓・羽口;鍛冶道具が主な対象である。 弥生時代については福岡野多目遺跡、古墳時代では福岡市博多遺跡、北九州市の重留遺跡、岡山県総社市窪木薬師遺跡、中世では総社市樋ノ本遺跡、近世では島根県馬場大鍛冶遺跡出土の鉄滓を、現地で観察しながら図化、写真撮影を行った。 これらの考古資料と鍛冶実験資料を比較検討した結果、これまで弥生時代には複雑な鍛冶工程は存在しないとされていたが、1200℃を超える高温下でしか生成されない鉄滓(径7〜8cm)が野多目遺跡で出土しており、今回の調査で千数百度の高温で鍛錬鍛冶が行われていたことが判明した。これは非常に大きな発見であった。ただし、この技術が保持されたのは当時の最先進地域、北九州だけの現象と考えられる。 古墳時代以降、径20cmを超える大型椀形滓が生成される。これは朝鮮半島からの新技術の導入に伴なうもので、鉄製品にも高度の鍛接・鍛金技術で生産されたものが出現してくる。古代から中世にかけては鉄生産が始まり、間接製鋼法に伴なう精錬鉄滓も確認された。 本年度の研究でわが国における鍛冶技術の一貫した発展過程をほぼ把握することができた。次年度以降の研究のベースがほぼ確立したと評価できる。
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