1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610405
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
古瀬 清秀 広島大学, 文学部, 助教授 (70136018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安間 拓巳 広島大学, 文学部, 助手 (40263644)
西別府 元日 広島大学, 文学部, 助教授 (50136769)
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Keywords | 鉄鍛冶 / 鍛冶実験 / 鉄滓 |
Research Abstract |
本年度はわが国の鉄鍛冶技術の体系化を理解するために、中国と朝鮮半島における鉄鍛冶技術について、主に文献による調査分析を行った。このほか、鍛冶技術の実態把握のため、鍛冶炉を独自に築き、鍛冶実験を実施した。 中国については、製鉄技術の研究は相当に進展しているものの、鉄器生産の現場の研究は未開拓のままである。これはわが国の鉄器生産が鍛造鍛冶中心であるのに比べて、中国の鉄器が鋳鉄製であることと関連していると考えられた。しかし、それでも武器生産に関しては鍛造鍛冶が存在し、河南省鉄生溝遺跡などでこれまで炒鋼炉と想定されていた炉が鍛冶炉である可能性が指摘できる。ただし、産業廃棄物としての鉄滓のデータがなく、今後現地における実施調査が必然となってきた。 一方、朝鮮半島では実用鉄器類の大半が鍛造製品であり、〓沙里遺跡などで鉄素材、鉄滓、鍛造剥片などの鍛造鍛冶に伴う一連の遺物が確認され始めており、わが国の在り方に極めて類似する鍛冶の存在が伺い知れる。ただ、ここでも中国におけると同様、現地での調査が必要となってきたといえる。 ここで東アジア世界の鉄鍛冶を概観すると、わが国の鉄鍛冶技術のルーツは朝鮮半島にあり、その根源は楽浪郡にあることがわかってきた。楽浪郡の鍛冶技術は鉄器類、鍛冶道具類の類似から紀元前1世紀頃には南朝鮮に伝播し、そこから北部九州に伝播されてきたと指摘できる。丁度弥生時代中期頃であるが、ただ伝播当初は、その技術は支配階層に独占された、いわば囲いこまれた技術大系で、村方に広く普及するのは古墳時代後半段階になってからである。その技術の程度は中世の刀鍛冶が伝承する技術体系に近いものと推定できた。 鍛冶実験については、古墳時代に鉄素材として流通する鉄〓を製作した。製作の過程で、送風状況、炉構造等に多様な変化をもたせて実験を行った。
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