1997 Fiscal Year Annual Research Report
遺跡出土の焼成粘土塊・焼成剥離土器片からみた弥生土器の生産・供給形態
Project/Area Number |
09610406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田崎 博之 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (30155064)
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Keywords | 焼成粘土塊 / 焼成剥離土器片 / 弥生土器 / 集落遺跡 |
Research Abstract |
今年度は、弥生土器生産を示唆する焼成粘土塊・焼成剥離土器片の資料調査と検討を中心とした作業を行った。その中で、焼成剥離土器片については、焼成剥離土器と剥片の接合例に加えて、個々の資料の器面に残る煤・火熱痕跡がないことを確認しながら、2次的な火熱を受ける可能性の少ない壺・鉢に限定して、資料を収集した。また、焼成粘土塊は、形・厚さ・重量感・胎土、裏面の圧痕のあり方や表面の処理は多様であり、土器焼成施設から出土する例や民族例から、土器焼成を想定できる2タイプの焼成粘土塊を限定した。以上の焼成関連資料の出土例から、土器の生産を行っている遺跡として、佐賀県吉野ケ里遺跡(前記〜後期)、大分県下群遺跡(中期〜後期)、愛媛県文京遺跡(中期後葉〜後期中葉)、香川県下川津遺跡(前期前葉〜中葉)、愛媛県朝日遺跡(中期後葉)、奈良県唐古・鍵遺跡(中期中葉〜後葉)などを確認できた。とくに、唐古・鍵遺跡では、中期初頭に3つの小規模な集落が環壕に囲まれて統合化されるが、中期中葉〜後葉には、その核となる3つのセクションで、おのおの焼成剥離土器片が出土しており、土器の焼成、生産が行われていることを明らかにできた。また、吉野ケ里遺跡では、中期には、吉野ケ里丘陵の中でも竪穴式住居跡が数多く営まれる吉野ケ里地区VI区(北内郭部分)で集中的に土器生産が行われている。これに対して、終末には、丘陵北部の志波屋六ノ坪地区、丘陵南端の田手二本黒木地区から焼成剥離土器が出土しており、それぞれで土器生産が行われている可能性が強い。しかし、中期と比べると、出土土器の量は極端に少なく、焼成関連資料の出土量は少ない。それほど集中的な生産ではなく、小規模個別的なものであったことが予想される。このように、時期・地域ごとに、多様な土器の生産形態が想定できる。生産形態の実態を集落構造と考えあわせ、生産様式の類型化と変遷を辿ることができると考える。
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