1997 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代前期における北端の古墳分化の研究-大塚森(夷森)古墳の発掘調査-
Project/Area Number |
09610409
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
辻 秀人 東北学院大学, 文学部, 助教授 (30244966)
|
Keywords | 大塚森古墳 / 粘土槨 / 木棺 / 墓道 / 葺石 / 前期古墳 / ガラス小玉 / 靱 |
Research Abstract |
平成9年7月24日から9月15日にかけて、宮城県加美郡宮崎町大塚森古墳の主体部及び主体部にいたる墓道部分の発掘調査を実施した。 調査の結果、長辺12.4m、短辺8.5m、深さ2mの墓壙底面から東西にならぶ粘土槨2基を検出した。東の粘土槨内に納められた木棺は、長さ7.9m、幅約1m、同じく西の粘土槨内の木棺は長さ7.7m、幅約0.8mと推定される。東槨内からは、槨の上面に置かれたと考えられるガラス小玉2点と若干の朱が出土した。一方、西槨からは上面に置かれたと見られる矢柄の一部や朱が出土し、棺の底面からは腕飾りと見られる一連のガラス小玉と管玉、靱の一部と推定される漆塗りの布の一部が出土した。墓道部分の調査では、2段のテラスの上に組まれた葺石と、周濠の途切れた部分から墳長の墓壙内に接続する新旧2時期にわたる墓道を確認した。墓道は墳丘内に設けられた溝状の遺構で、遺体の埋葬時には機能しており、埋葬終了後埋め戻され、その上に葺石が組まれることが判明した。 調査の結果大塚森古墳の築造時期は古墳時代前期後半段階であること、主体部は木棺を粘土で覆う粘土槨と呼ばれる、畿内を含めてこの時期の古墳に共通するものであること、棺内には副葬品は少なく、やや特異なあり方を示すことなどが判明した。古墳時代前期において北端の古墳でも埋葬の儀礼が貫徹している様子を確認できたことが大きな成果であった。 平成10年度は、出土した遺物の整理作業を進めるとともに、朱や棺内の土壌の成分分析。関連資料の調査検討を行い、古墳文化の北端に築かれた前期古墳の特質を明きらかにしていきたい。
|