1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610428
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
町 博光 広島大学, 教育学部, 教授 (10116668)
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Keywords | 本土方言 / 奄美諸島方言 / 対照研究 / 語彙 / 身体部位称 / 中核的意味 / 派生的意味 |
Research Abstract |
本土方言と琉球方言(奄美諸島方言)との対照方言語彙論の展開として,身体部位称の「目」(mi:)をもとに具体的な考察をおこなった。 従来の語彙研究では,琉球方言のmi:には,本土方言の「目(め)」をあててことたれりとしていたが,その内実は単純ではない。本研究では,目の複合語や慣用句まで,目の表現すべてを対象にして抜き出し考察を進めた。その結果,本土方言では「目」の意味が観念的であるのに対して,琉球方言では,「目」そのものの部位の機能を残したままの把握のしかたをしていることが多い。「目から火が出る」「目を三角にする」「目の色をかえる」「目尻がさがる」「目をふせる」「目もくれない」などの「目」の中核的意味からの比喩的派生的言いかたが,本土方言ではさかえている。琉球方言にはこのような例は認められない。それに対して,琉球方言では,mi:turarjun(目をとられる→目が眩む)mi:putigikunajun(目が落ちそうになる→注目する)など,身体部位としての目(mi:)の意味が残った用法にとどまっている。 本土方言の「目」と琉球方言のmi:には,われわれの想像以上の差異が見てとれる。 身体部位称全体にわたって,このような対照研究が継続される必要がある。
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