1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610450
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Research Institution | Shimane Prefectual Shimane Women's College |
Principal Investigator |
三保 サト子 島根県立島根女子短期大学, 文学科, 助教授 (60108256)
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Keywords | 往来物 / 古往来 / 教育史 / 寺院 / 弟子僧往来集 / 一二月消息 / 南都往来 / 垂髪往来 |
Research Abstract |
寺院文化圏で成立したと見られる古往来として、当初は、「釈氏往来」「十二月消息」「山密往来」「垂髪往来」の四点を考察対象として考えていたが、新たに、「南部往来」「異制庭訓往来」「弟子僧往来集」を加えた。これら七点の内、本年度は、「垂髪往来」「弟子僧往来集」「南都住来」を中心に調査した。 研究の重点は、本文の精査、内容の解釈、文章の特質解明である。 「十二月消息」「垂髪往来」「弟子僧往来集」につき、伝本調査に基づく正確な翻刻本文を作成した。また、内容の解釈を行い、文章表現を中心に、「雲州往来」や「蒙求」などの類書類との関わりを調査した。「垂髪往来」については、纏めの論者を準備中である。 伝本の収集については、「山密往来」「釈氏往来」「異制庭訓往来」の各一本を加えることが出来た。 「南都住来」につき、史実との照合を試みているが、手がかりが少なく困難な状況にある。「南都」の命名(平泉澄博士)は、現存する宝徳写本が興福寺別当経覚の書写にかかり、かつ、同寺に伝来したことによると推測されるが、原題は未詳である。所収状には、維摩会に招く、常楽会の桟敷斡旋を依頼するなど、南部(興福寺)における成立を窺わせるものもあるが、一方、勧学院(高野山か)や比叡山関係者の書状と見られるものもある。一通は概ね短く、実用的な文章である。「十二月消息」「垂髪往来」などに比べ、文章の質に意が払われていないように見受けられる。原本調査が難しいため、本文にも疑点が残っている。引き続いての課題としたい。
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Research Products
(2 results)