1997 Fiscal Year Annual Research Report
ブレイクとホイットマンのポストコロニアル・ヴィジョン-英米ロマン主義の比較研究
Project/Area Number |
09610465
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 文芸・言語学系, 助教授 (40151667)
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Keywords | ブレイク / ポストコロニアル・ヴィジョン / ペイン / アルビオン / 黒人奴隷 / 啓蒙思想 / イギリスロマン主義 / 植民地 |
Research Abstract |
二年計画の本研究の一年目は、ブレイク作品に植民地主義に関するディスコースがどれくらい展開されているかを考察することに費やされた。とくに、十八世紀の啓蒙思想関係の資料を用いながら、なかでもトマス・ペインのパンフレット類に注目しながら、グレイクの詩と絵画と彫刻画にみられるペインの影響を分析した。 ペインがめざした植民地の解放と独立の理想は、とくにブレイクにおける黒人奴隷の表象に影響をあたえていることを明確にした。また、ブレイクがつくり出した「アルビオン」(国でもあり人でもある)の造形に、ペインのポストコロニアル的理想郷の思想が流れ込んでいることも、あきらかにした。 しかし、ブレイクは絵画(あるいはイラスト)を用いて解放を理想郷を描こうとしたため、そこに無理が生じた。理想的な状態にある人間を、白人の男としてイメージ化したのである。すると黒人や女などの要素は排除されてしまい、あたかもブレイクが白人中心の植民地主義に賛同しているかのような印象をあたえてしまうのだ。ブレイクにとって理論と実践のギャップが問題が深刻として存在していることも、あきらかにできた。
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