1997 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における英米と日本のシェイクスピア劇の演出法に関する比較研究
Project/Area Number |
09610477
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依田 義丸 京都大学, 総合人間学部, 教授 (30135462)
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Keywords | 20世紀 / シェイクスピア劇 / 演出法 / ピーター・ブルック |
Research Abstract |
今年度は、当初の計画通り、20世紀のシェイクスピア劇の演出法のうちイギリスに焦点を当てた。年度の前半では、主にイギリスにおける今世紀のシェイクスピア劇上演に関係した書物、そうした上演についての劇評、演出家たちによる演出メモ、出演した俳優の演技談、舞台美術及び音楽についての記録などを中心にした資料を収集した。年度の後半では、主に収集した資料の分析と整理を進めた。多数の資料の効率的な整理のために二つの方法をとった。一つは、シェイクスピアの各作品ごとの整理であり、もう一つは、各演出家ごとの整理である。分析を進めるうちに明らかになったことは、20世紀のシェイクスピア劇のイギリスにおける演出法は、一見雑多に見えるようでいて、その実は、特定の画期的な演出、具体的には、1955年のピーター・ブルックによる『タイタス・アンドロニカス』の残酷さの象徴的な描写に力点をおいた演出の影響を肯定的にも否定的にも受けたものになっているということである。すなわち、残酷さを象徴的に表現するか、それとは逆にリアリズム的に提示するかのどちらかになっているということである。そこで、20世紀のシェイクスピア劇演出法の展開を典型的に示していると思われる『タイタス・アンドロニカス』の演出・上演を取り上げ、ピーター・ブルックの演出法が同作品のその後の他の演出家たちの演出に具体的にどのような影響を与えたかを、他の作品の演出への影響も視野に入れながら、一つの論文にまとめている。論文発表の時期は、秋を予定している。
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