1997 Fiscal Year Annual Research Report
ハワイにおける日系移民文学の歩み:ポスト・コロニアル視点による再構築
Project/Area Number |
09610482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
臼井 雅美 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00223537)
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Keywords | アメリカ文学 / 日系アメリカ文学 / ハワイ文学 / アメリカン・スタディーズ |
Research Abstract |
研究テーマの周辺領域であるハワイの歴史、民族史、社会史の資料収集は、ハワイへの日系移民100年を記念してハワイで出版された日本語によるハワイにおける日系移民の歴史、生活史と、英語を母国語とする日系二世・三世の研究家等による著作に二分された。また、現代において再構築されつつあるハワイに関する研究書が日・米両国で出版されつつある。これらの資料をもとに、ハワイにおける日系文学の足跡を調べたところ、サトウキビ栽培の復興により一寒村から日系移民のコミュニティーが構築されたハワイ島などにおいて日系一世による俳句や川柳などの日本語による文芸活動が始まり、若い世代の日系移民の多くがホノルルを中心とする都心に移り住んだ後も、地方で続けられたという点から、ミシガン大学の日系三世研究家スティーブン・スミダが指摘しているようにハワイの日系文学が地方性を特色とするものであるという観点で捉え、ハワイ地方主義(Hawaiian localism)とハワイ意識(Hawaiian consciousness)を現代に至るまでの日系作家に当てはめて論ずるという方向で、新たな資料収集と日系作家による作品の分析を行った。 その中で、特に今まで日本だけでなくアメリカにおいても一度も論じられたことがなかった日系三世の詩人であるJuliet S.Konoの詩集二編に、その現代ハワイ文学の中で特に日系を含むアジア系作家が理想として追い求めてきたハワイの独自性であるハワイ地方主義とハワイ意識というものを読みとり、日系移民にとってハワイという生活空間を担ってきた火山列島であるハワイの自然を象徴する水、特に海、雨、津波をメタファーとみて、作品を分析、批評し、第36回日本アメリカ文学会全国大会において、「Tsunamiとの闘い--ハワイの日系詩人Juliet S.Konoの世界を探る」という題のもとで、論文を発表した。
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