1998 Fiscal Year Annual Research Report
ハワイにおける日系移民文学の歩み:ポスト・コロニアル視点による再構築
Project/Area Number |
09610482
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
臼井 雅美 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00223537)
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Keywords | アメリカ文学 / 日系アメリカ文学 / ハワイ文学 / アメリカン・スタディーズ / 比較文化 / 比較文学 / エスニック・スタディーズ |
Research Abstract |
ハワイの日系文学の土台を作ったビッグ・アイランドという俗名を持つハワイ島に点在した雨量が多い西海岸の砂糖黍畑と栽培産業を中心に発展したヒロなどの日本人町と、東海岸のコナ・コーヒー栽培を中心に発達した日本人のコミュニティーから誕生した日系三世の詩と短編小説、その後の社会・経済変化に伴うマウイ島ホノルルへの日系人の移動と都市で新しく従事することとなったスモール・ビジネスを描いた日系三世の作品を、ハワイの経済的・社会的背景と日系社会と生活観・価値観の変遷から分析した。資料収集の際、ハワイ大学マウイ校ハミルトン図書館のハワイアン・コレクションとジャパン・コレクションの閲覧をし、貴重な参考資料を得た。ハワイアン・コレクションではヒロの津波やコナ・コーヒー、ハワイの特産物海運に大きな影響を与えた港のストライキに関する資料を得たことにより、ジュリエット・S.・コノ、パティ・サイキなどの作家が描いた作品の背景を裏付けることができた。その中で、コノに関する論文を出版することができた。特に、ジャパン・コレクションには、日本の作家梶山季之の蔵書であったカジヤマ・コレクションがあり、ハワイ大学日本研究センター所長であるシャロン・A・ミニチエロ教授の手引きで特別に閲覧を許可された。副産物として、流行作家と知られた梶山季之が、日系二世の母を持ち、「移民」というテーマを、第二次大戦中を経て一家で入植していた「朝鮮」と出身地広島の原爆投下から得た「平和」と共に三つの柱とした『積乱雲』を未完のまま世を去ったことを知り、梶山と「移民」を論文にまとめた。さらに、ハワイ出張中に、上記のテーマにおける様々な点に関して、ハワイ大学のデニス・オガワ教授とジュリエット・コノ両氏から貴重な話をお聞きし、特にコノ氏からは個人蔵の資料をいただいた。
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