1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610494
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
道家 弘一郎 聖心女子大学, 文学部, 教授 (40052112)
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Keywords | ヘルメストリスメギストス / ユダヤ教的カバラ / 「神から」の創造 / マルシリオ・フィチ-ノ / 能 / 内村鑑三 |
Research Abstract |
本年度は、ペトルス・ラムスやジョン・ディーの影響を探る過程において、次第に時代を遡り、中世からルネッサンスにかけて、キリスト教以外の思想・信仰がもっていた力に注目するに至った。一つは、エジプトやバビロンから発しギリシアに受継がれ、ヘルメストリスメギストスに集約される系譜であり、もう一つは、キリスト紀元後も相変らずユダヤ人の間に懐かれつづけたユダヤ教の系譜である。 ルネッサンスの幕明けを飾るマルシリオ・フィチ-ノの思想も、単にギリシア的人間主義の復活ではなく、ユダヤ主義的カバラの影響があることが指摘される。 ミルトンの思想において特徴的なex nihiloではなく、ex deoの創造説も、遠くユダヤ主義的カバラに由来するのである。 筆者は、ようやくその点に気付いたばかりなので、これら二系譜の文献の蒐集と読解に着手したところである。このような研究の副産物として、わが国の死生観を最もよく反映している形而上詩としての「能」に開眼するところがあり、それについての小論を著わした。また「臍を見るな」と題して、ゲーテ、カ-ライル、内村鑑三と引継がれてきた着想のなかに、信仰と文化の違いを認める小論を発表した。
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