1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610504
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原野 昇 広島大学, 文学部, 教授 (80069161)
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Keywords | フランス文学 / 中世 / 文献学 |
Research Abstract |
フランス中世の傑作『狐物語』を伝える写本として、ヨーロッパおよびアメリカ以外にあるものとしては唯一の写本である、広島大学所蔵のt写本(広島大学付属図書館184624番[953/R-16])を総合的に研究するために、本年度はまず当該写本に用いられている羊皮紙の作成年代に推定することから始めた。そのために、AMS放射性炭素同位体年代測定法による年代測定を、広島大学文学部地理学教室の協力を得て、ニュージーランドのInstitute of Geological & Nuclear SciencesのRafter Radiocarbon Laboratoryに依頼した。その測定結果によると、当該羊皮紙の作成年代、すなわち当該動物(羊とは限らず、むしろ仔牛[犢]の可能性が高い)が死んだ年代として、95%の確率で、西暦1227年から1408年、68%の確率で言えば、西暦1280-1316年と1317-1346年であるという結果が得られた。空気中の放射性炭素の割合が変化する関係で、68%の確率の場合には二つの年代幅が出ている。言い換えれば、確率68%で、西暦1317-1346年の期間を除く、1280-1391年であると言える。これは作品の創作年代と、それが該当写本に書き写された年代との関係を知る上で非常に貴重な情報である。
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