1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610505
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
露崎 俊和 青山学院大学, 文学部, 助教授 (50180055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 善太 青山学院大学, 文学部, 講師 (70286219)
平野 隆文 青山学院大学, 文学部, 講師 (00286220)
植田 祐次 青山学院大学, 文学部, 教授 (40082622)
西村 哲一 青山学院大学, 文学部, 教授 (80198506)
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Keywords | 悪魔 / ルネサンス / 零(ゼロ) / 暗黒小説 / 風景 / 主体 / 詩的言語 |
Research Abstract |
本年度は三度の研究会(うち一回の合宿を含む)を催し、三本の研究発表をおこなった。最初の研究会では、研究分担者各自が概ね当初の計画に沿って研究を遂行する事が確認された。平野は、ルネサンス期における悪魔のイメージをとおして、知識層による世界の神学的表象と歴史の深部に埋もれた民衆経験との接合点をさぐり、ルネサンスの負の部分を明るみに出すことをめざす。西村は、零(ゼロ)の概念が十七世紀哲学において、世界の合理的表象という問題に関連していかなる機能を果たしたかを考察する。植田は、主に、暗黒小説(サド、レティフ)に的を絞り、十八世紀における反理性の地平を解明する。荒木は、十九世紀における風景の表象を主題としそこに近代における主体経験の根幹的な変容の相を読みとろうとする。露崎はマラルメの詩的言語論を主軸に、文学テクストにおける表象の解体という問題に取り組む。 実際の発表において、平野は、ラブレ-『第三の書』の一節と『エプタメロン』からの一篇を取り上げ、ルネサンス期知識人における悪魔が人間にとって外的な存在から人間にとっての内的な欲望の代行者(隠喩)となりつつあることを指摘し、民衆的悪魔像と先鋭的知識層における悪魔概念との落差を提示した(第一回発表)。荒木は、山岳風景が「崇高」の概念と結びついて文学的表象のうちに登場する十八世紀から、それがカタログ化され、紋切り型へと堕していく十九世紀の流れを概観し、そこに近代的主体(個人)の成立と風化が投影されているという仮説を提起した(第二回発表)。露崎は、『詩の危機』を題材に、マラルメにあっては詩的言語が表象可能なものの背後に想定された超越的秩序との連関でその機能を規定されることを論じた。
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